1-3.羽ばたきの土台 

ところで、外国に行こうとしたことに関係あるので、
ちょっとだけ家のことを書いておくね。

この記事の最初の部分だけだからつきあって。


祖父母の家は田舎にあるんだけれど、私は大学入学と同時に、父と元愛人の住む都心のマンションにしばらく同居することになった。

元愛人は父より16才年下で、私とひとまわりしか違わなかった。
私が17才の時に東京へ父に会いに行った時なんて、その人まだ20代だったんだ。(◎皿◎)

そこはカップルで暮らすのにぴったりの、都心を見晴らす高層の5階にある1DKだったけど、余分な部屋はないから、突然上京した娘の私は居場所がなくて、
”もっとひろいところを借りるまでは” ってことで、私は廊下と区別がつかないようなキッチンにふとんを敷いて寝てい
たんだよ。

いくら天然の私でもちょっときついよね、こんな環境…。
(はい。身の上話はここまで。(´・∀・`)) 

それで大学で知り合った貧乏学生の女友だちのアパートに転がり込んで、アルバイトをしながら一緒に暮らし始めたんだ。

彼女もアパート代が半分になって助かった。
アングラ演劇に凝ってる子で、訪ねてくる友だちも面白かったなあ。

その後父は東京の郊外に家を建て、元愛人も正式に籍を入れてそこで暮らし始めたけれど、私はそこへ戻ることはなかった。

でもここへきて外国へ行く資金を貯めるため、両親の新しい家に入り、そこを足台に昼も夜も働くことにしたさ。


昼間の仕事見つけたよ!
都心に近い会社の事務員に応募したら、採用になった。

夜は夜で自宅のある駅の近くの割烹でのお皿洗いを始めた。

帰ってから、継母に録音しておいてもらったNHKのラジオ講座の基礎英語もかかさず聞いている。
私、すごくがんばっている。

最初、両親は、”フーテンの兄に影響されたバカな妹だ” と反対してたけど、
「まあ、いいさ。 続くはずないよ。 そのうちあきらめるだろう」
って感じになってきた。

私が朝6時半からの強行スケジュールを終え、割烹の板前さんに送ってもらって帰宅するのは夜の11時過ぎ。
玄関を開ける音を聞いて、父が心配そうにふすまの隙間から様子を伺っていたりする。

目も開いていられないほど疲れ果て、着替えもせずにそのまま床に倒れて眠ってしまう夜もあるけど、
次の朝はまたパッと目覚めて元気いっぱい戦闘開始!

私、今一番輝いているかも。
だって夢は目の前。
働いて必要なお金を作りさえすれば、世界への道が開かれるんだもの!
早起きも満員電車もお皿洗いも全然辛くないよ。

祖母は主な手術や治療を終えたので近くの病院に転院し、祖父と叔母さんたちが世話をしている。
今まで家のことを何もしなかった祖父が台所に立ち、祖母が退院する日のために、柔らかい魚の煮物などに挑戦しているらしい。

年取ってからのこんな夫婦愛もいいかも。

おじいさん、おばあちゃん、ごめんね。
もっとそばにいてあげられなくて。




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事務服

とってつけ事務員ナリ。 とってつけ同僚の皆さんと。


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1-4 亮介兄さんの”スオミの夏” 

まだまだ働いてお金を貯めなければならないので、合間に亮介兄さんからの手紙の話題を入れるね。

兄さんから、

「ナホトカからシベリア鉄道に乗り、ハバロフスクで途中下車、世界一透明度が高いといわれているバイカル湖を見た」という便りが届いたよ。

「こんなにきれいな湖、見たことなかった。相当な深度なのに底が手に取るよう見え、泳いでいる魚も半分透き通ってるんだ。」

彼は車上で、日本に何年も住んで帰還途上の外国人宣教師や、日本語ペラペラの変な外人(表現ごめんなさい(´ヘ`;))に沢山会って、退屈になりがちな二週間の列車の旅を楽しいものにしたみたい。

その宣教師さんは、「そんな英語じゃ世界は渡れないぞ」と毎日英語の特訓をしてくれたんだって。
外の景色は、時々過ぎ去る点在した町村を除いては、どこまで行っても大平原。
そこに沈み行く夕陽と夕焼け空のパノラマは忘れられないそう。

人々の顔は暗く車上の鉄道員も命令調で、一度、昼間から閉められているカーテンの端から外を眺めたら、「よせ!」と怒鳴られ、
振り返って見ると、その鉄道員の手は白い布で包まれた、拳銃らしきものをこちらに向けてしっかり握っていた、なんてこともあったとか。


さて、この旅にまつわるちょっぴりドキドキエピソード。

亮介兄さんはその鉄道の旅で、
グリーンの湖のような瞳を持ったフィンランド人の女の子 と知り合った。
バイカル湖じゃないけれど、
その透き通るように澄んだグリーンの瞳にじっと見つめられると、頭の後ろ側まで見えてしまいそうだったって。
(おいおい、「吸い込まれてしまいそうだった」とか、もう少しロマンチックな表現はないんかい?!!)

そして下車駅であるフィンランドのヘルシンキに着く早々その子の家へかれて、おじいちゃんおばあちゃん含む大家族に大歓迎された。

フィンランドは別名 “スオミ” と呼ばれる森と湖の美しい国。
人口の数より湖の数の方が多いんだって。 驚きだね!
なんか先の戦争で日本に助けられたので親日家も多いのだそうだ。
歴史をもっと勉強しなくちゃ…。(教科書で勉強するのは苦手。わかる人、フィンランドと日本の関係についてどなたかわかりやすく投稿解説して下さると嬉しいな。 コメント、よろしくお願いします。)

彼と彼女が森の中を散歩していると鹿が出てきて歩行や車のじゃまをするし、ベンチに座って話していればリスが出てきて手をつっつくそう。
動物が全然人を恐れていないんだね。

亮介兄さんはそうして一緒に森の散歩や、木々の緑映す湖のまん中に船を浮かべて釣りをしたり、向こう岸のスエーデンを見ながら川で泳いだりして一日を過ごし、美しい自然の中でそよ風のような友情を彼女に抱いたのだけれど、さてその夜のこと。

その日はフィンランドではまだぜいたく品だったカラーテレビを買った日であったにもかかわらず、8時になると、二人を残して家族全員が姿を消しちゃったんだって…!!





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フィンランドからの絵葉書