2-46 プロフィシェンシーに挑戦・合格 


年が明けて1月。
私はワトソン氏の仕事とマムの看病の補佐としてウェールズとオックス
フォードを行ったり来たりする生活をしている。

学校は、能力いかんよりも空席ができないため入学の競争率が高い
公立の ”オックスフォード カレッジ オヴ ファーザー エデュケーション”。
コース名は、”ケンブリッジ プロフィシェンシーコース” で、その試験
合格に照準を合わせた内容になっている。
公立の学校には私立の語学学校に通っている時からずっと行きたいと
思っていたんだけど、入る手立てもわからなかった。
コネとかはない世界だけど、ワトソン氏が一市民として、

「これほど熱心に勉強したい生徒がいるのだから、学生ビザほしさに
籍だけ置いて働いている外国人学生よりこういう学生を優先すべきだ」

というようなことを学校に意見して下さったらしい。
でも、もし学校が認めてくれても空席がなければ入れないんだけど、
その時は幸いいくつか空席があるとわかり、私の友だちの苦学生も
いっしょに入学の手続きができたんだ。

とにかく、空席があるかどうかの問い合わせ方法もわからないし、
申し込み方もわからなかっただろうから、ワトソン氏の助けがなければ
きっとあきらめていたと思う。

この学校は外国人学生も受け容れるイギリス人向けの教育機関で、
大学を卒業した人も追加の資格や免許を取りに来るカレッジ。
クラスの先生の計らいで、私たちはしばらくの間イギリス人学生といっ
しょに社会学の授業も取ることができた。
それは試験の作文や面接の助けになったと思う。
そしてそこで、イギリス人の友だちもできたんだよ。

プロフィシェンシーの上にディプロマという資格もあるけど、それは、
”免許”やら”学位” という意味で、基本的にはイギリス人向けのもの。
だから、プロフィッシェンシーが英国政府がケンブリッジ大学に委託し
て行われる “外国人向け” 英語試験の中では実質上最上級で、外
国人学生はこれを取っておけば全世界で通用するって話なんだけど、
米英語の影響が強い日本ではまだあまり浸透していなかったりもす
るとかしないとか。

そんなこといいよね、英語の大本山、イギリスの資格だもの。

そのプロフィシェンシー試験は、文学鑑賞や社会問題に関する作文、
面接にも重点が置かれているため、言語の熟達度に加え教養がない
と受からないので、イギリス人も4人に1人しか合格点を取れないとか
で、どこか似通った言語の中で育ったヨーロッパ人が受験するのと違
い、文法も背景も全く違う日本語の中で育った日本人にはかなり難関
の試験だ。

去年の6月にその下のローアーケンブリッジに合格して以来、この最
高の試験に挑戦してみたいと思うようになって、初心者クラスから始
めて1年4か月。
あと5か月後に受験を控え、猛勉強しているよー。

このコースは、授業料も1学期63ポンド(当時で5万円弱)と安いかわ
りに1クラス30人もいて、授業時間も午前中3時間のみと少なく、
だから働きながら通っている人が多いんだけど、私立の語学学校とは
内容が違う。
“短い授業数で勉強に専念” という感じで宿題も多く、学業が主体なの
でパーティーやお出かけイベントはないけど、
授業が午前中だけだからオペアもできるし、もぐりでアルバイトすること
もできるってわけ(!)。
実際、私の他の日本人学生も全員働いている。
1人は大学の食堂で給仕やお皿洗い。
きっとこの仕事には労働許可証が下りているんだろうね。

クラスメートの中にはオペアガールが2人いて、1人は、
「イギリスの一般家庭では食事がつましいというかあまりに簡単で
非効率な料理しかしない」
ってあきれている。
じゃがいもたった1コをオーブンに入れて40分も焼いてバターを乗せ
て食べたり、夕食が缶詰のケチャップ漬け大豆をトーストに乗せて食
べるだけだったりすることがしょっちゅうなんだって。

もう1人も、離婚した家庭のベビーシッター兼家政婦のよう。
それも、イギリス人でなく、移民の家庭なんだって。
それが悪いって訳じゃないけど、何だか原則からはずれてない?

私は思ったよ。
「やっぱりオペアガールの実情は、メイドを雇う余裕がない家庭のメイド
代わりなんだ」
って。
だって、オペアガール システムは国際交流の一環として、外国人学
生にイギリス人の家庭を体験してもらうということと、
学生生活を経済的に援助するという目的もあってできたシステム。
だから中流以上の家庭しか雇ってはいけないというのが規則のはず
なのに、この内容じゃたぶん中流未満の家庭でしょ?

きちんとシステムが作動しているかどうかチェックして、立場の弱い
オペアガールを守る労働組合みたいなものを作ってほしいよ。

ところで、公立と違って私立の語学学校は授業料も1学期 280ポン
ド(当時で20万円くらい)と桁が違ったけど、少人数制で午後3時頃ま
で授業があって、個人個人に合わせて手取り足取り指導してくれる。
もちろん、営業目的が占める割合が大きいので、学生を引き寄せるた
めの娯楽イベントも盛りだくさんだ。
遊びや観光を兼ねた楽しい留学なら、そしてお金にいとめをつけない
なら私立の語学学校がいいかもしれないね。


さて、オックスフォードのワトソン氏の書斎には今でも昔の仕事がらみ
の機密書類がたくさんあるそうで、留守中、他の人には決して入らせ
なかったんだけど、家族と認められた私は出入りを許され、お掃除を
させてもらっている。

最初はびっくりしたよ。
部屋の隅々に茶色くて小さな石ころみたいなものが落ちていたから
何かと思って拾ってよく見たら、なんとそれらはカラカラに乾いて固まっ
た使用済みティーバッグだった。
カップは最初に訪問した時に出てきたのと同じく、みーんな内側が茶
渋でまっ茶色!
中古屋さんで買ったらしい、部分的に敷かれた絨毯の端切れの上に
は、汚れ防止のためか新聞紙が敷いてあったりして。
奥さんが亡くなられた独り身の学者さんといえば、こんなもんかもね。

私が来てからは少しは身の回りに構うようになって、壁紙も貼ったよ。
もちろん自分たちで、暇を見ては何か月もかけて。

ワトソン氏は定期的にオックスフォードに戻り、5軒のアパートを回っ
て新旧間借り人交替時には痛んだ家具を交換していた。
そのために私が中古の家具屋さん巡りに付き合うのは定番だ。
いい味の骨董品風のものは決して買わないどころか、
「こんなんでいいの?」
ってくらいボロくてやっと最低限の機能を果すだけのようなものを買い
込む。
その分、家賃を安くして貧乏学生を助けているのだそうだ。

ある時、家賃を払わない亡命者の学生の部屋を一緒に訪ねたことが
あった。
彼女は真冬なのに、電気代を節約してストーブをつけずにオーバーや
毛布にくるまって勉強していた。
ワトソン氏は少し世間話をしたあと、電気のメーターに何かして、電気
が無料で使えるようにしたんだよ。

それから、外壁のペンキ塗りや壁紙貼り、庭の芝刈りなども貧しい学
生にアルバイトでやらせた。
亮介兄さんがウェールズに訪ねて来た時も芝刈りをやらせてくれた。

確かにワトソン氏はケチって評判だけど、本人は、

「“マイザー” と “エコノミカル” は違う。
前者は “ケチ” だが、後者は “経済観念がある” という意味。
私は後者だ。
意味のないものにお金を使わないだけで、価値ある物には出資は
惜しまない」

なあんて、負け惜しみのような説明をしてたっけ。
そしてチャリティーにもお金を寄付している。

知らない人には低い声で、威厳があって、相手を圧倒するようなこわ
いおじいちゃんだけど、本当は公平で人間味溢れる立派な人だよ。


亮介兄さんは夏に北欧へ発ってしまったけど、ロンドンにいる間は時
々、兄さんが仲間たちといっしょに借りていたアパートも訪ねていた。
世界を放浪している人たちとの会話はほんとにおもしろかった。
どーしてーも、いっしょに旅する気にはなれなかったけどね。
私は勉強したかったから。

すっごーくえらく聞こえるけど、肩書きや出世のための勉強じゃないん
だ。
好きなことを極めたい、その分野で少しでも上を目指したいって、情熱
のようなもの?
英語が話せればいろんな国の人たちといろんなことが話せるようにな
り、お互いのことや国のことがより理解できし、心も通じ合える。
それが本当に楽しいんだもん。

プロフィシェンシーに合格すれば、私の中で、”自分がそれだけがんば
った” っていう証明と人生の記念として残るから。


そして6月、合格点ギリギリだったけど合格したよ。

大きな目標も達成できたし、さあ、これからどうしよう… ね!






     ミニ オックスフォード周辺 案内


今日は観光案内ではなかなか出て来そうにない2スポットを
紹介するよ。



       小さな飛行場

オックスフォード郊外に小さな飛行場あり。

グライダー

「ちょっとだけ、私も乗せて!」


OXグライダープロペラタッチ





       ウエストン マナー

ウエスタンマナー


”マナーハウス” というのは、昔の貴族や領主の邸宅のこと。

オックスフォード郊外の ウエストン オン ザ グリーン にある、この
ウエストン マナー もそのひとつ。
時々アフタヌーン ティーに出かけたんだ。

現在はホテルになっているので、お茶だけでなく、
重厚な中世のアンティックづくしのお屋敷に泊まれるよ。

部屋を見せてもらったけど、絢爛豪華な調度品の中にあるベッドときた
ら、天井から下がるカーテンのような布に囲まれた、まるでお姫様用の
ようなベッドだった。

建物は11世紀に建てられ、1920~30年代にオーナー家族何代
かにより改築の手が加えられたが、1940年代後半にホテルに
転換。
そして1983年に今のオーナーに買い取られ、現在に至るそう。

第二次世界大戦中は、BBC放送スタッフの宿舎になったというエピ
ソードもある。

オックスフォードあたりに行く予定のある方は、一泊いかが?
ブレナム宮殿も近いです。




ウエスタンマナー建物



ウエスタンマナー庭木

12エカーの敷地の庭園の一部。


ウエスタンマナー庭1

植え込みがね、日本庭園みたいに、きれいな形に刈り込んであるんよ。
動物の形だったりもして。









ワトソン氏応接間

ワトソン氏の応接間のいちコーナー

剥き出しの床に飛び石みたいにラグが置いてあったところに
絨毯を敷き詰め、殺風景だった壁に壁紙も貼りました!
(色・柄はワトソン氏の好み。あしからず)

左は、タイ航空のスチュワーデスさん。







(↓続きを読む >> に続きあり )

ケンブリッジ プロフィシェンシー検定 談義


自慢したいわけじゃないけど、ケンブリッジプロフィシェンシー検定で
検索していたらおもしろい投稿を見つけたので載せときます。

お馬鹿だった私も半端じゃなくがんばったら合格したので、教育が
普及していて一般的教養レベルの高い日本人ならほとんどの人に合
格のチャンスがあると思うんだ。
いい試験ならもう少し知名度が上がってたくさんの人にチャレンジして
ほしいような気がする。
(2001年の投稿なので、その時より少しは上がったかなぁ) 

でも日本語はいっさい関係ないから、通訳や翻訳の勉強は別にやら
なくちゃならないっか…
ちなみに合格レベルは私はもちろん3段階の一番下だよー。
そりゃ、日本育ちだったら、近隣同士で言語が似通っているヨーロッパ
諸国の人たちと同じレベルってわけには行かないでしょが。




12 名前: 名無しさん@1周年 投稿日: 2001/05/04(金) 12:37

ケンブリッジ試験の最上級レベルは、教養のあるネイティブにとっては
難しくはないでしょう。 でも高校ドロップアウトですぐ妊娠しちゃうような
ドキュソはイギリスにもいるわけで彼女たちには難しいでしょうね。
この試験自体は現行の英検1級レベルと思われますが(一昔ではない)、
合格者の中でもまた3ランクに分けられるらしい。 
英検1級ではボーダーでたまたま受かった人も、ほぼ完全なバイリン
ガルで受かった人も同じ英検1級ですが、この試験は合格者をさらに
3ランクに分けるので真の実力が測れます。 
また試験時間がやたら長い。
英語が日本人と比べれば格段に上手いヨーロッパ各国でこの資格イ
コール英語教師の資格と見なされているようです。
ケンブリッジ大学認定の試験ですからねえ。 日本でいったら東京大
学認定の日本語試験の最高レベルの試験のようなもの。

が、残念ながら日本では全く知られていない。 だから、日本国内で
は価値がない不思議な試験です。







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