2ー42 アンヌイル 


ウェールズに来てから半月ほど過ぎた。

マムは頭のはっきりしている時は、元気な頃の人柄がうかがえるようだった。
聞き取れないような声でだけれど、とんちのきいた冗談を言い、顔をくちゃ
くちゃにして笑う。
あまりしなびていて小さい顔なので、笑っているのか泣いているのかわから
ないんだけど、笑っているんだ。
私のこと、“シバの女王” だって。 髪が黒いから。

イースター礼拝に行くワトソン氏を呼び、
「髪はとかしましたか?
靴は磨きましたか?
どれ、一回りしてごらん」
70才台の息子もマムにとってはまだ子どものまま。

何十年か前に、エジプト人のお医者さんに嫁いだもうひとりの娘さんの元へ
休暇にマムを連れて行った時も、
パイロットの免許を持っているワトソン氏が操縦室を見学に行こうと席を立つと、
大勢の乗客の前で、

「そこらをいじっちゃダメですよ。
何もいたずらするんじゃありませんよ!」
と、人差し指を上下に振って ”メッ” をしたそう。

その村では昔、炭鉱が盛んだったので、裏の山にその跡があり、今も掘った
時の土を盛り上げた山から煙がたなびいて、美しい山々の斜面や野原に牛
や羊が平和そうに草をはんでいるけれど、

その裏山で他の子どもたちと駆け回って遊んでいたワトソン氏に、マムは窓
から白いハンカチを振ってお茶の時間の合図をしたとか。

マムはギリギリまで痩せ細って身動きできず、ほとんど眠っていたけれど、
目を覚ますと私の手を握ってじっと見つめた。

若い時は日曜日には教会へ三度も行ったという彼女だけど、私が教会に
行こうとすると手を離さず、

「あなたが外出するととてもさみしい。私といっしょにいて」

と嘆願したり、

「暖かくなったらベッドごと車に乗ってピクニックに行きましょうね」

という私の言葉に、「どうしても明日行く」 とだだをこねて、周囲をてこずらせ
たこともあった。

彼女は私を “アンヌイル”(ウェールズ語で “愛らしい” とか “大切な” という意味だって)と呼んで、とても大切にしてくれた。

ヒステリー気味のアネッカに時々辛く当たられたけど、マムはワトソン氏を
呼んで、

「ワラティグ ハー(彼女を大切に扱いなさい)。
彼女は招待されて来たのであって、メイドではありませんよ。
仕事は強制ではなく、家族の一員としてできることを頼むだけですよ。
フェアでなくちゃいけません」

と言って下さったり。
相変わらずそばに来る人に、「あの子は私をマムと呼んでいるか」と確かめ
る毎日だったけど、私の髪を撫でながら、

「この目の前にいる女の人を、あなたは何と呼んでいるか」
と聞かれた時には気恥ずかしくて…
「マムです」
と答えると、頷いて眠りに落ちた。

『一日も長く生きてほしい。この人のためなら何でもしてあげたい…』
見も知らなかった病床の老母との心の通い合いが、私にとってもかけがえの
ないものになっていたよ。






          ミニミニ 観光案内



  
ウエールズ絵葉書ブラックマウンテン

ウェールズの田園風景とブラックマウンテン(絵葉書)



ブレコン絵葉書

一番近い大きな町、ブレコン(絵葉書)



ウェールズの海岸

ウェールズの海岸(Port Eynon~Rhossili)(観光パンフより)


ウエールズ海岸2



メイドシンディー

メイドのシンディーと、ワトソン家のキッチン裏で

まだおまけあり




その他の周辺旅


200px-Torquay_-_Devon_dot.png

トーキーの位置(ウィキペディアより) 

 
ウエールズの港

お休みに遊びに行った
イングランド・デヴォン州の港町
Torquai (トーキー)の港。

日本から送られて来た着物を着ている。ショールはウェールズ製だよ。

この町は、アガサ クリスティーの生まれ故郷で、イギリスのリビエラ
とか呼ばれている風光明媚な街だけど、観光パンフにはほとんど出
て来ない。
調べてインターネット上で訪れてみて!




トーキー絵葉書

その時投函した、トーキーの絵葉書 


トーキーのピース家

トーキーでは親日家で愛妻家のピース夫妻を訪ねた。
(全く、勘弁してほしーヨ kao06

New-Quayの港

また別のお休みに行った
イングランド・コーンウォール半島の港町 
New-Quay (ニュー キー)の港。

 
ニューキーは、上の地図の、トーキーがあるコーンウォール半島の
先っぽ 


あゆみさん

いっしょに旅したあゆみさんです。






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