2-29 弟への手紙 前半 


今回は、中学生の弟に書き送った手紙をそのまま載せます。
その時の様子がよくわかるので、皆さん宛だと思って読んで下さいな。


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ターボー、 元気に勉強してる?
日本は、故郷はどうですか。

すごく驚くこと教えてやるね。
この間ね、私がアルバイトから帰って部屋のドアを開けてびっくり。
誰かが床の上で寝てるんよ。

私はメキシコの女の子といっしょに部屋を借りてるんだけど、もう一人、誰かが寝袋にくるまって床の上に転がってんの。
メキシコの女の子の友だちかなんかかな、と思ったら、その人、ムックリ起き上がってね、なんと!! 
その人の顔は亮介にいと同じ顔だったのです!

兄さんは先月末、ストックホルムを発ってアフリカへ向かったんだけど、途中のパリで待ち合わせしたのに会えなかったんよ。
途中で予定を変更したにしても、きっとそのまま仲間たちとアフリカへ向かったと思っていた。

私はへんな気がして来て、「あんた、誰?」 と聞きました。

するとその人はやっぱり、「私はあんたの兄さんよ」 と言うのです。

ビャーッ びっくりしたねー、その時は。

この広い世界で、ユーラシア大陸を陸路で旅したあと、ギリス海峡を渡り、針の先より小さな私と、それよりいくらか大きいだけの亮介にいが、そうしてオックスフォードのひとつの屋根の下でご対面したのです…。
嬉しかったよー。

パリの山口君のアパートで待ち合わせをした時、どうして来なかったのか問い詰めたら、

「オレ、ドイツで監獄に入ったんだ。」

だって!

気を落とさないで下さい、ターさん、
お前の兄さんは、真っ赤なワーゲンバスでワイワイ楽しい仲間たちと旅をしていたので、お巡りさんに赤軍派と間違われたのです。

つかまったキッカケは、といえば、運転手のさん吉さんという人が、橋の上でビュンビュンパトカーを追い越しちゃったんだって。
捕まえるはずだよね。

そのワーゲンバス、2万円くらいで、クラッチが外れて、後で後戻りして道路の上に落っこちているのを拾いに行くそうだけど、
持ち主は兄さんと、マックさんという日本人。

マックさんはストックホルムのマクドナルドで働いていたので、マックさんてあだ名だそうだけど、元レーサーですごくかっこいい人なんだって。

その人はそのままスペインに行っちゃったんだけど、おまわりさんに銃を突きつけられ、囲まれた時、

「お前、銃を持っているか」

と聞かれ、ブスっとした顔で、

「俺は今、マシンガンが必要だ」 (無礼なお前たちを撃つための)

って答えてすぐに捕まっちゃったんだって。

ドイツの警察ってすごいらしいよ、すごみがあって。
兄さんね、大脱走に出てくるような独房に3日いたんだって。
恐ろしかったと言いながら、

「俺、シマシマの囚人服着たかったなあ、いっそのこと」

そういうわけで、無事開放されてから、兄さんは山口君のところに何日かいて、肩まで伸びた髪を山口君に切られ、それからネパールが好きだというネパールさん、さん吉さん、そして、あやめさんという人も、兄さんにつきあって、仲間たちみんなでドーバーを渡り、姉さんに会いに来てくれたのです。
ウルウル…

兄さんはロンドンのクラブで、さん吉さんと交替でウエイターとお皿洗いをしています。
会員制クラブで、ポール マッカートニーやリンゴ スター、デビッド ボウイなんかがしょっちゅう来るんだって。
この間なんて、あのガーファンクルのバースデーパーティーで、彼と肩組んで歌ったって、感激してた。

兄さんは偉いよ。
スエーデンで一生懸命働いて15万円(今の感覚で50万円近く?)貯めたって。
だいぶ減ったそうだけど、旅や車に使った分は、お金には代えられないいい思い出になって胸の中にいっぱい残ってるんでしょ。

このメンバーたちは、ロンドンは物価が安いからって冬を越すことにしたらしいんだけど、もともとはそれはスペインだったのに、予定を変更してイギリスに… ほんと、泣けちゃう。
仲間って、いいね!

スエーデン、フィンランドが素晴らしくて、みんな春になったらすぐに戻りたがってます。
自然と子どもたちの中に溶け込んで過ごした数か月間が忘れられないみたい。

フィンランドはお隣の経済大国のスエーデンには馬鹿にされているけど、素朴で人情に厚くて遊びに行って家庭サウナに入っていると、奥さんまで平気で入って来るんだって。ひとりで!

日本はロシアと戦争して勝ったって、田舎のお年寄りなんて今でもすごく親しみ深く話しかけてくるそうだけど。
最近、ばかな日本人が酔っ払って公園の白鳥を殺して食べたという記事が新聞に載ってからは、日本人を見ると窓から石を投げるって話も聞いた。

冬になるとストックホルムで稼いだ連中はそのお金を持ってそれぞれ自分の行きたい国へ旅に出るでしょ。
そうして次の年にまた北欧に戻って来る。
そしていろんな旅の話…。
出会った人々の話を持ち寄るらしいの。
そしてまた働く…。
次の旅のチャンスのためにね。

そんな繰り返しを何年もやっている人たちに私もずいぶん会ったよ。

姉さんは今、オックスフォードのレストランでお皿洗いをしています。
イギリスのレストランの洗い場はとっても不衛生。
野菜なんかろくに洗わないし、お皿もスプーン、ナイフも汚れたまま洗剤液の中でこすって、すすがずに拭いちゃうの
お皿洗いしてる人たちによると、どこもそうだって。
その上、一般の家庭でも同じなんだって!
信じられないけど、本当なんだよ。

ていねいに洗っているとあとからあとから山積み。
夜中の1時まで片付けして、残業手当なんてよっぽど儲かった日じゃないと出ないんよ。


(弟への手紙 後半 に続く)





     ミニ オックスフォード案内  - パブ -


イギリスといえば、パブ (パブリック バー)。
町の中にも郊外にも、たーくさんあります。
”上流階級用” と ”労働者階級用” で、ドアと内部が分かれているの
もおもしろい。

どちらに入るのも自由だけど、上流階級用の方は、ふっくらソファーに
厚い絨毯敷き、すごく静かな雰囲気。
労働者用の方は剥き出しの床にジュークボックスやダーツなどの遊び
道具ありで、ワイワイガヤガヤ賑やかだった。
お酒を注文しようとすると、私は16才くらいに見られ、しょっちゅう身分
証明書の提示を求められた。

最初にパブへ行った時は、お客さんたちが、”おつまみ” なしで、
ビールだけで飲んでいるので驚いた。

「おつまみは要らないの?」

と聞くと、すごくけげんそうな顔をされ、

「お酒を飲むのに、お腹をいっぱいにする必要はないじゃないか」
って言われちゃった。

日本ではお酒のつまみも立派なお料理のジャンルになっていて、
お腹をいっぱいにするためでなく、お酒をよりおいしくいただくための、
ちょっとした箸休めというか、芸術品になっているでしょう?
旬を取り入れ、器も工夫して…。

イギリスではビールが冷やしてないのにも驚いた。
(最近は、種類によっては冷やすらしい)

「冷やすと舌が痺れて、ビールそのものの味も風味もわからなくなっ
ちゃうじゃないか。
日本では冷やすのか?
そりゃ、デリカシーのないアメリカ式飲み方の真似をしてるんだろう。」

って言われてしまった。

それと、
パブではビールそのものの味といっしょに、”討論” が大事な要素。
ビールを飲みながら、政治、経済や、世界情勢を語り合う。
会話が日本の ”おつまみ” の代わりなのかも。

だからね、ただお酒を飲みに行く人は、パブでは浮いてしまう。
自分の意見を持って、ちゃんと討論ができないと。 

”英語が話せるかどうか” 以前の問題だね!




ヘンリーのパブ

オックスフォードの隣町ヘンリーの、テムズ河沿いのパブ

ヘンリーは、オックスフォード大学×ケンブリッジ大学の
最初のボートレースが開催された町


Henry.jpg

ヘンリーの町
上の写真は、この橋から撮ったもの



トラウト イン   クラスメートと

オックスフォード郊外の、ウオルバーコートの ”トラウト イン”
画面左側は川。 クラスメートたちと。 手にはビールジョッキ。
下の写真の木の陰にいるよ。


トラウトinn

上の写真のパブをもっといい季節に橋の上から撮った写真。



パブアンカー

パブ ”アンカー”



牧場のパブ

牧場のど真ん中にあるパブ



郊外のパブ

郊外の、野原の真ん中にあるパブ



水辺のパブ

ずっと後には、こんなイギリス人の友人たちと川辺のパブに
飲みに行くこともありましたよー!


川辺のパブ

  ↑この人ね、”魔法使いさん” ってあだ名だったの きゃー!


(↓秘密がいっこ隠れてます)




img518.jpg

真ん中が、魔法使いさんが思いを寄せていた日本女性。
魔法は効かなかったみたいよ。



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