2-26 再びパリへ 


ドーバーまでの英国電車は、「決して乗客を立たせるほど切符を売らない」
という英国鉄道の信条通り、赤いベルベットのシートにゆったりだったけれど、向こう岸のフランスの港町カレーからは超満員。

指定席とは知らず、私たちは3人とその他の慌て者の乗客がコンパートメント(個室になっている客席)に腰を落ち着けたところ、
一人のきちんとした身なりの日本人男性が踏み入って来て、眉間に皺を寄せ腕を振り回しながら、すごいけんまくで叫んだ。

「アウト! アウトーッ!!」 (出ろ! 出ろー!!)

まるで家畜でも追い出しているようだった。

私は日本人として穴があったら入りたい気分だったよ。
私以外はみんな外人だ。
その人たちに向かって、

「すみません、ここは指定席なのですが…。」

なぜその一言が言えないんだろう。

立ち退く私たちの後に入って来たのが、全員、毛皮のコートを着た日本人有閑マダムと若い令嬢風グループ。
その男は雇われガイドなのだろう、その人たちに対しては大そう腰が低く、打って変わったように終始満面に笑みを浮かべていた。

パリに着くころ、通路に立ちっぱなしの私にお声がかかり、ひとつ空いていた席に座らせてくれたのはいいんだけど、

ジーパンのロングスカートに褪め切ったTシャツ、毛玉のいっぱいついたカーディガンに黒い毛糸のストールをジプシー風に羽折っていた私が、毛皮に埋もれて何倍も大きく見える彼女たちの間に入り込むことはとてもおかしく思えた。

また彼女たちの会話ときたら、お城を買う話、ヨーロッパの各地の高級レストランの話など、私からすると鼻持ちならないものばかりで、(ひがみじゃないってばぁ!) しまいにはそのイヤな雇われツアーコンダクターを指さして、

「こういう男性は女性の憧れね、有能で世界のあちこち飛びまわって。
きっと泣かされる方も多いでしょうね、オホホ。」

ゾーッ。

パリの北駅に、亮介兄さんの友だちの山口君が迎えに来てくれた。
彼はパリで絵の学校に通っているんだって。
私はあまり話したことはないんだけど、小さい頃はラオスで暮らしていたとかで、両親が海外赴任のため、中学・高校と、亮介兄さんと同じ男子校の寮に入っていた。
時々、兄さんといっしょにギターを弾いたり絵を描きに行ったりして、自分で曲も作っていた。
日本人だけど、なんか違う雰囲気を持った人だ。

パリの裏町のアパートは、階段の電気がスイッチを押して30秒で切
れる自動節電式。
トイレには鍵がかかっていて、住人だけが使えるようになっている。

そのトイレはいつかどこかのカフェで見た、しゃがみ式、四面剥き出しのコンクリート、足台の部分だけ残して洪水の押し寄せる、パリの名物だった。

お風呂もない!

その界隈は黒人やアラブ人が多く、とても女の子の一人歩きはできないそう。
(ごめんなさい。差別的言動だけれど、聞いたままを書くよ。)

山口君は、夜になると私たちに部屋を開け渡して友だちのところへ泊まりに行き、翌日の夕方アルバイトが終わると迎えに来てパリの街の案内してくれた。

私たちのためにアルバイトを休み、まる一日、昼間のパリを見せてくれた日もあった。
エッフェル塔とセーヌ河下りにはまだ行ったことがなかったから良かったけど、まだ行っていないアレハンドラとジョアンナのために、パリ名所筆頭の凱旋門、ノートルダム寺院、シテ島にも行ったんだよ。
(何回目だぁ~っ?!)

その山口君、アレハンドラのエゴ発揮ぶりに、
「ミヤちゃん、今度は日本人の、もっといい子を連れておいでよ。」

グサッ…。
ほんとに私がいけなかったんだ。
はっきり断れなかったから。
そういう時は、たとえどんなに親しくなってもはっきりキッパリ断れなくちゃね!
遠回しの断り方も×。
日本人同士で通用しても、育った環境も物の考え方も違う外国の人には真意は伝わらない。

亮介兄さんは、3日待ってもまだ来ない。
どうしちゃったんだろう… 途中で何かあったのかなぁ…
心配だヨー…。


そんな夜中のこと、アレハンドラが突然、叫び出したんだ。
「かゆい! かゆいーっ! たまらないっ!!」


それで、とんでもないことに…。





          プチ パリ案内




エッフェル塔

曇りの日のエッフェル塔 (写真 from フォトライブラリー)




セーヌ河より

セーヌ河下り (写真 from フォトライブラリー)





パリ市庁舎    パリ市庁舎500



                   パリ市庁舎
  
    別の時に撮った、夕陽を浴びるパリ市庁舎。
    なぜか建物に、赤いリボンや紋章のような装飾がしてある。
    お祭りの期間とかだったのかな。




パリ市庁舎400

                パリ市庁舎 上と同じ建物
                (写真fromフォトライブラリー)







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