2-3 パリのトイレは優雅なり 


そこをちょうど通りかかったのが、アメリカ人の若者。
道端に地図を広げてうなっている私たちに、

「May I help you? (お助けしましょうか?)」

と、笑って手を差し延べてくれた。
片言英語で ”切符の買い方がわからない” と説明すると、彼は幼い子どもに教えるようにコインをひとつひとつ数えながら、
正しい機械に入れて切符を買ってくれ、プラットホームの番号と電車の時間を調べてくれた。

「グッドラック!」
と手を振って去って行った、その親しみあふれる笑顔の爽やかだったこと!
フランス人男に、そんな表情は見られないのだ。 O(`ω´*)o

長時間の緊張続きで喉はカラカラ、お腹はペコペコだったので、行く先に一筋の光が見えてきたところで、ひと休みしようと入った駅前のカフェのボーイもそうだった。

唯一わかる世界共通語のコーヒーを注文したんだけどね、一応はお客様の私たちに、ろくに返事もせず、こちらはありったけの愛嬌で物 (実はトイレ) をたずねているのに、無表情で指さすだけ。



-ちなみに、トイレはフランス語で、トワレ。
  スペルは英語と同じでも、最後の ”t” は読まない。
  “オー・ド・トワレ” (オー・デ・コロン) の “トワレ” だね。
  “トワレ” は、洗面や化粧をイメージした単語で、
  “オー”っていうのは、“水”のこと。

  もうひとつおまけにつけ加えると、“オー・デ・コロン” の コロン は ドイツの
  “ケルン” のことだよ。
  このあとケルンに行った時に知った。
  ケルンが、オー・デ・コロンの発祥地なんだって。



さて、そうして入ったトイレが何たるや!! 愕然とした。
蝶ネクタイのボーイさん、しゃれた通りの、籐椅子、虹色のパラソルつきのテーブルが並んだカフェのムードに似合わぬ、
原始的、薄汚れたコンクリート四面の、地べたしゃがみ式だった。
またその紙の茶色くて硬いこと。
わら半紙というより、水をはじくつるつるの油紙のようなのだ。

古びた鉄タンクの擦り切れた縄ひも (ほんとだよ) を引っ張ると、轟音と共に水が押し寄せ、狭い室内の床は、足の形をしたコンクリートの台だけ残して大洪水。

聞くところによると、パリ中心街のカフェや下宿やさんでも、この種のトイレとトイレットペーパーは珍しくないそう。

注文したコーヒーは、何の飾りもないちいさな白カップに、角砂糖つきで出てきた。ミルクは見当たらない。
そうだ! ミルク入りのコーヒーがほしい時には、“カフェ・オ・レ” と言わなければいけなかったのだ。
味は…
日本の喫茶店のコーヒーのほうがずっとおいしいような気がしたよ。

席を立ち伝票通りにお金を置くと、ボーイさんがフランス語でいちゃもんをつける。どうも、チップを払えと主張している様子。
当然だ、という面持ちで。 ( ;∀;)



-私、チップというのは、ボーイやウエイトレスさんに親切にしてもらった時
 に、こちらからすすんであげるものだと思っていた。
 これはフランス国内どこへ行っても同じで、ウエイターやウエイトレスさんへ
 のサービス料金というのは正式に記されたメニューの項目の料金の他 に
 必ず取られた。
 時にはメニューの値段の中に初めから含まれている場合もあったけど、レス
 トランで “安い” と思って注文したら、払う段階になって、10~15%額が
 増えていた、という事も多いので、要注意だ。
 また、メニューは、フランス語で、“ムニュ” と読み、ふつう、
 “スリーコースの定食” のことなので 間違えないようにね。
 英語の “メニュー” は、フランス語では、CARTE (カルト) 。
 だから、 “ア・ラ・カルト” って、
 ”定食でなく、メニューの項目からあれこれ選んで”
 という意味だったんだ。
 なので、日本語式に、「メニューを下さい」 なんていうと、何も頼まないうち
 にオードブルかスープで始まってしまうので、それも気をつけてね。



とにかく、言葉が通じず習慣も違う世界に飛び込んで、飲み物食べ物もまともに注文できず、
トイレの正しい聞き方もわからず、私たち、いい年の青年男女は、揃って赤ちゃんに戻ったような状態で。

“ユースホステルに辿り着けさえすれば、ちゃんと夕飯が食べられる”

それだけを心の支えに、再び日暮れの駅に向かうのだった。 






   

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               写真(FROM PHOTO LIBRARY)





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