通訳よもやま話(5) スペシャルオリンピックス (後編) 


ここからいよいよ本番でのお話に入ります。
大変お待たせしてごめんなさい。   (←Sorryといっている)



スペシャルオリンピックス開会式開始前にはね、
NHKの古野晶子アナウンサーと私は、舞台の上で西田ひかるさんに場内アナウンスサー&通訳として紹介され、
会場の皆さんに一言ずつ挨拶をする場面もあったんだよ!

古野アナウンサーの挨拶は西田さんが通訳したけど、
私の時は、西田さんに、
「あ、通訳は必要ありませんね、ご自分で訳して下さいな」
と言われたので、日本語と英語で挨拶したんだ。

なんか、ほんとに人生の晴れ舞台だ。
もちろんその部分は放送はされなかったけれどね。
声だけで顔は見えない、裏方さん的存在だもの。



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隅田川の花火

文字ばかりになりそうなので、花の写真を挿入するね。
誰が名付けたのか、「隅田川の花火」という名前の花。
素晴らしい命名でしょう?!


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選手団入場時のアナウンスは、次々に入場する84か国の選手団の国の名前を私が英語で、そのあと古野アナウンサーが日本語で読み上げたあと、選手代表がそれぞれのチームからのメッセージを読み上げ、その和
訳を司会の西田ひかるさんとケイン小杉さんが読み上げるというスタイルで進んで行きました。

その時、西田ひかるさんは、読み方がよくわからない国名の発音にどう対処したと思う?
それは、こんなふうだったんですよ。
たとえば、
「○○○○○(読み方がよくわからない国の名前)は…」の部分を、西田さんは「私たちの国は…」と、置き換えて訳していたんです。(賢~い!!)

それぞれの国の名前は、選手団の先頭の人が国名が文字で書かれたプラカードを持っているし、入場と同時に英語と日本語のアナウンスで紹介されたあとでどこの国のことを言っているかわかるわけだから、
紹介文の始まりは、「私たちの国は…」でバッチリOKだったってことです。
臨機応変、機転が利いて、ほんとにスマートですよね!

私の方はというと、いまだに自分がアナウンスした国名の読み方、発音が正しかったのかどうか、わからないままです…。


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りんごの花

りんごの花

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ここからが、ドジドジ美弥の恒例ともいえる冷や汗もんエピソード。

そんな本番中のことです。
あわててしまったきっかけは、ケイン小杉さんが、イランのメッセージ訳の中で、「イラン」を「アイラン」と読んだこと。
国の紹介がアルファベット順だったので、順番ではイランの次がアイルランドだったんだけどね…

アイルランドの発音は、「アイァラン(ド)」だけど、途中のァと最後のドは弱く発音するのでほとんど聞こえないところへきて、
マイクの反響で音がクリアに聞こえない上、緊張のせいもあり、私には一瞬、イランの「アイラン」が、アイルランドの「アイァラン」のように聞こえてしまったんです。

それで私はその瞬間、本番真っ只中に頭の中が真っ白になってしまいました。
つまり、「次はアイルランド」と心の準備をしていたところへ、ケインさんが、イラン」を「アイラン」と読んだため、

「あれれ? 次でなくて、今がアイルランドだったのかな??
えーっ、じゃ、次は、アイルランドを言えばいいの? それともアイル
ランドの次の国?!!」

ってなことになっちゃって、パニくっちゃったわけよ。
わかる? 「アイラン」=「アイルランド」?って思考経路 →
思考停止状態。


その時でした。
ペアを組んでいた日本語アナウンサーの古野さんがあわてまくっている私に気づき、「美弥さん、次はアイルランドよ」
と、助け舟を出してくれたので、私はホッと胸を撫で下ろし、次の選手団のプラカードを確認しつつ、無事にアイルランドの国名をアナウンスして窮地を脱することができたのでした。
さすがプロ。本番でも落ち着いていて、自分の出番以外のまわりの状況もちゃんと見ていてすごいと思いました。
古野っち、ほんとにありがとう!

古野さんは知性と優しさ親しみやすさを合わせ持つ美人アナウンサー。
現在、土曜日朝のNHK週刊ニュースのアナウンサーで、「美の壷」のナレーターもしています。



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馬籠宿の民家の軒先

木曽の馬籠宿の民家の軒先に咲いていた花1

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「イラン」を英語では「アイラン」と言うこともある、ということには、あとで気づきました。
イランの人たちは自分の国のことを「イラン」と言うようですが、英語がネイティブの人は「アイラン」と言うんですね。
「日本」と「ジャパン」のようなものかな。
(サッカーのワールドカップなどを観ていると、イランの応援団は、「イラン!」「イラン!」と言って声援を送っていますね)
ということで、あまりに知られている国名だったので確認することもなく固定観念そのままに、「イラン」は「イラン」と思ってしまった
のですが、さて、英語としてはどちらが主流なのでしょうか。
そんなことも気にしながら、次回、なにかの国際試合があったら、イランの国名を耳を澄ませてよく聴いてみて下さいな。



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馬籠宿軒先2

木曽の馬籠宿の民家の軒先に咲いていた花2

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2月のエムウエーブは冷蔵庫の中にいるような感じですごく寒かったけど、ホカロンをたくさん貼って、リハーサルと本番の2日、がんばりました。
西田ひかるさん、ケイン小杉さん、スペシャルゲストの上戸彩さんと同じ並びに、ちゃんと名前が書かれた控え室もいただいたんですよ。
ずっと離れた、奥の方だったけど…

これもオランダのプリンスとの思い出と一緒にとってもいい思い出で、
「英語を勉強していて良かったな」って思えた出来事でした。



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(↓追記あり)


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2005 スペシャルオリンピックス
冬季世界大会開会式 
元田中康夫長野県知事オープニングスピーチ



全国、全世界からお集まりの皆さん、よい子の皆さん、ちょっぴり悪戯(いたずら)っ子の皆さん、私は「『脱ダム』宣言」に謳(うた)われるが如く、日本列島の背骨に位置し、数多の水源を擁する信州・長野県で県知事を務める田中康夫です。

私達の信州・長野県は、年齢や性別、経歴や肩書、国籍や障害の有無を問わず、生きる意欲を有する人々に、より開かれた人生へと挑戦する公正な機会を提供する自治体=コモンズです。


コロニーと呼ばれる閉ざされた施設の中で一生を過ごすのではなく、知的発達障害を乗り越えて、地域=コモンズの中で愛する人と一緒に暮らし、働く確かさを実感できるグループホームへの地域移行を、日本で最も先駆的に進める信州の地で「スペシャルオリンピックス冬季世界大会」が開催されるのは、私の喜びであり、誇りであります。
 現在、善光寺脇の県立信濃美術館では、スペシャルオリンピックスの開催に併せて、「アートSO」展が開催されています。それは、知的発達障害、或いは精神障害と共に生きる方々の作品を展示する企画です。

奇しくも、スイスはレマン湖(Lac Leman)の畔(ほとり)のローザンヌにも、私が敬愛する画家ジャン・デュビュッフェ(Jean Dubuffet)が設立した美術館「アール・ブリュット(Museee de L’Art brut)」が存在しています。

私は、「アウトサイダーアート」と一般には呼ばれる、こうした障害者が描いた作品を眺める度に、痛感するのです。

何の不自由もなく暮らしていると思い込んでいた私達の方が寧ろ、今から69年前にチャールズ・チャップリンの描いた「モダン・タイムス」の様に、効率至上主義の世の中で皮肉にも歯車の一部と化して、非人間的な日々の生活に追われている事を。逆に、障害と共に生きていく人々の方が正(まさ)に、“アール・ブリュット=なまの芸術”を紡(つむ)ぎ出せる、より人間的なインサイダーとしての私である事を。

スペシャルオリンピックスは、手を差し伸べようと考えていた私達の方が寧ろ逆に、人間として忘れ掛けていた「確かさ」や「喜び」を、改めて教えて貰える得難き集いなのです。多くの方々が、感動を超えて、人間としての自分を再確認する時空でありますように。どうも有り難う御座います。


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