通訳よもやま話(3)オランダの皇太子との小さいけど素敵な思い出 


長野冬季オリンピック終了後の出来事です。

オランダの選手、役員、コーチ、スポンサー会社のVIPたちなどが、とある日本旅館に立ち寄られたのですが、私はその旅館に、通訳とお世話係として待機していました。
スピードスケートでメダル総ナメ状態で連日新聞の一面を飾っていたあの選手、この選手の顔も。スリッパの履き方、脱ぎ方(揃え方)から、お料理や温泉の入り方など楽しく説明させていただきました。
お祝いの会、お疲れ様の会でもあるので、みんなとっても明るく楽しそうでした。
もちろん日本旅館も日本料理も温泉も初めての人がほとんどですから、何もかもが珍しく興味しんしん、という感じでしたよ。

そしてなんと
その席に オランダの皇太子様もいらっしゃる という報が入りました。
皇太子様のスケジュールは、警備の関係から、前もっては通知されないのだそうです。
だから何時にお着きになるかという予定も知らされず、まずインカムを耳につけたものものしい警備の方たちが先に着いて安全を確認しつつ、「今、お車がどこの角を曲がられた」とか常時連絡し合っていました。
超VIPがいらっしゃるって、こういうことなんですね。



その皇太子様の写真(当時)


皇太子様がお着きになり、みなさんとご一緒に懐石料理をお召し上がりになりました。
私がお料理の説明をしたのですが、何十人という人数に、いく品もあるお料理を時間を見計らっていっぺんにお出ししなければならないので、てんやわんやでした。
一品一品が間を置いて次々に小出しに出されるわけですが、次のお料理が出るまでにかなり時間がかかってしまった時には、ちょっと間延びした雰囲気になった場面もありました。
おしゃべりでつないだりもしましたけれど。
外国の方たちにとったら、その間ずっと畳に座っているというのも辛かったかもしれませんね。


さて、皆さんが温泉体験をすることになりました。
その旅館には、混浴もあったんですよ。
常時、着替え室には混浴に入るお客様のために体に巻く用のバスタオルが用意されているのですが、大変困ったことになりました。
オランダの方たちは身長がすごく高いんです。
女性でも180センチ、190センチの方はざら。
お泊りのオランダ人VIPのお客様方の浴衣やおふとんは特大を特注してご用意したのですが、バスタオルのサイズまではスタッフの誰も気にしませんでした。
私は女性の着替え室に入り、女子選手たちに「こうやって巻いて入るんですよ」と説明したのですが… みんなただただ笑いころげるだけ。
想像できるでしょ?
バスタオルが小さすぎて、大事な部分が全然カバーできないんです。
どうやって混浴のほうに入られたのか、私はそこまではご一緒しなかったのでわかりません。

そして… 私の生涯で一番素敵なできごとのひとつともいえる体験が待っていました。
皇太子様が浴衣にお着替えされるお世話係をおおせつかったのです。
もうひとりのベテランの仲居さんと二人で。

宿の責任者によれば、
「若い女の子よりも年配のスタッフのほうがいいから」
ということだったのですが、失礼な!!
その時、皇太子様は39才の独身、私はまだ40代半ばです!

美しい日本庭園を望む宿の一室で、皇太子様に浴衣の説明をしながら、きれいに着せて差し上げました。
警護の人もドアの外で待機するのみで、さすがに部屋の中までは入って来ませんでした。

皇太子様も例に漏れず、とても長身でした。
高貴で威厳があり、礼儀正しく、その時は、レディー(ばあちゃんかい?!)の前でお洋服を脱がれるという状況ですから、ちょっとこわばった表情をされていましたが…

皇太子様は他の皆さんより先にご出立になられましたが、お別れの時、私はオランダ語で、「またね!」と、気さくに皇太子様の後ろ姿に声をかけました。
(なんと畏れ多い!!やっぱオバちゃん代表?!)

するともう数歩、お車に向かって歩き出されていた皇太子様はびっくりされ、振り向かれ、わざわざ私のところまで戻っていらして、
「その言葉は誰に教わったのか?」
とお聞きになったのよ。
オランダの方に教えていただいたことを告げると、にっこり微笑まれ、
「またね!」
と、同じ言葉を返して下さいました。
まわりにいた人たちは、皇太子様と私が何を話していたのか、全然わからなかったでしょうね。
オランダ語と英語だったから。
不思議だったでしょう。

まあ、それっきり、全然、国境を越えたラブロマンスのきっかけにはならず(あたりまえじゃ!)、数年後、この皇太子様のご成婚がニュースで伝えられました。

39才独身、長身、透き通るように色白で美しくハンサムな北ヨーロッパの国の皇太子様ご接待のお手伝いさせていただき、
そして1m以内の距離のところで 「またね!」 って、オランダ語で言葉を交わした日本女性はそんなにいないのではないでしょうか?
(雅子様はどーかなー…英語じゃないかなー… ン? ライバル心?)

「英語を一生懸命勉強して良かったな」
って思えたいち出来事でした。

皇太子様、どうぞお幸せに。



お幸せにお暮らしのその皇太子様と雅子様の記事がありました。
(クリック)

2006 オランダの皇太子ご夫妻と雅子様関連記事



(現在は国王に即位されていて、皇太子と雅子様が昨年でしたか、
 即位式に行かれましたね! 2014. 3 記)


Comments

オリンピクの裏方さんの仕事が分りましたよ~

美弥さん、楽しく拝見いたしました!
長野オリンピクでの裏方さんの懇親的な接客で海外の皆さんは日本びいきになったと思いますね!オリンピクの成功の影には通訳さんや各旅館さんの涙の思い出が浮かびましたよ!
  • [2010/03/19 15:17]
  • URL |
  • ハッピーです!
  • [ 編集 ]
  • TOP ▲

Re: オリンピクの裏方さんの仕事が分りましたよ~

その通りですね。
その旅館でも、オランダのお客様をお迎えするのに、特大の羽布団や浴衣を沢山用意されたんです。一度使うだけなので、「これもボランティアだ」と言ってらっしゃいました。
おもてなしの心はしっかり伝わり、お金には代えられない良き思い出として双方にいつまでも残ると思います。

Comment Post















管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

Trackback URL
http://annuyle.jp/tb.php/151-f8fb322d