3-14 マドラスのハリジャンたち(神の子・不可触賎民) 

(前回の話の続きは、次回に)


たそがれものがたり
~ あるハリジャン一家の夕暮れ時 風景~


ハリジャン” (神の子)とは、ガンジーが名付けたインドの階級制度の最下級の極貧の民のことで、別名 ”アンタッチャブル”。
アメリカの映画の名前じゃないよ。
”あまりに汚くて触れない” という意味でそう呼ばれている。

彼らの貧しさは人間とみなされていないために救済の手もほとんど差し出されていなかった。
「金持ちの車がアンタッチャブルの一人や二人引いても警察は動かない」
って、現地の人が言ってたよ。
放浪牛の方がましなくらい。だってインドでは牛が神様扱いされているから、牛が食料店に来て商品を食べても何もできないんだよ。
差し障りのない程度に追い払うしか。

前にも書いたけど、彼らは生まれた時から死ぬまで、その階級でしか生きられない。
劣悪な環境での過酷な仕事しか与えられず、そしてそれは親から子へと受け継がれて行く。

奴隷制度も廃止され民主主義がかなり広まった現在だから、人権を訴える運動も何度も起きて多少は状況が改善されているらしいけど、
「カースト制はインドの主流宗教であるヒンドゥー教の教えから来ているんだから、ヒンドゥー教がなくならない限り変わらないでしょう」
って仏教徒のインド人青年が言っていた。
人権よりも宗教の教えの方が重要なんだね…

「そしてもしカースト制度の壁に小さな穴が開くことがあっても、上流階級の人たちがお金を使っていい教育を受けるから、
結局、ハリジャンたちはよっぽど優秀だとか運がいいとかしない限り、平等なスタートラインにも立てないわけで、上に上がることはすごく難しいし、もし上がれても差別に遭って続かないんだ」とも。


その極貧のハリジャンと言われている人たちの日常をいつも工場の窓から見ていた私は、ある日の午後から夕暮れにかけての様子をカメラで撮ってしまった。

彼らだって私たちと同じ感情を持った人間。
当たり前のことだけど、この映像を通して私の気持ちを共有してほしい。
私は上から珍しい物を見るつもりで彼らを見下ろしていたんじゃないんだ。
「がんばって!」って声援を送っていたつもりだし、子供たちが逞しく
事に成長して行ってくれるよう、祈っていたよ。

彼らにも肖像権はある。
だけど、もう30年以上も前のことだし、親しみを持って見守っていた上でのことなので、ここに載せることを彼らに許してほしい。

ということで、今回は私のカメラが捉えたありのままのインドの姿の一部をお伝えします。




歩道が憩いの場?2

工場前の川辺に住む貧しい人たちの家。

”景観がよくない” と、時々市のトラックが来ていっせいに片付けてしまうのだけれど、すぐにまた元通りになっているという。
(あれ、どこかの国のホームレス関連ニュースでも聞いたような…?)



アップ11

(上の写真アップ)ひとつだけこざっぱりした家があって、
その住人らしい人が歩道に日よけを張り敷物を敷いてくつろいでいる。
どんな人なのかな。傍らにはペットらしい犬もいる。(きっと野良犬だね…)



貧しい家族の家1


手前にいるのが、今日のものがたりの主人公でもある双子の姉妹。
拾ってきたごみや布切れで覆ったこの家に、7人家族で暮らしてい
る。
もちろん、電気も水道もない。

上の写真では、双子はどうやら家の蔭でお昼寝中の白いワンちゃ
んに近づいているところみたい。

家の入口あたりにいるのは、8才くらいに見えるお姉さん。
写真では、摘んできたジャスミンの花で髪飾りを編んでいるところ。
それを毎日市場へ売りに行っている。
お姉さんは双子の妹たちの面倒もよくみている。

日本でいえば中学生くらいのお兄さんもいて昼間どこへ行っている
のか不明だけど (学校だといい)、いつも夕方帰ってお母さんを手
伝っている。

お父さんともう一人の住人(たぶん、おじいちゃん)も昼間何をして
いるのか不明。
お母さんは足に障害があって歩けない。

極貧でも家族のつながり強く、仲むつまじい。

双子の姉妹は栄養失調でお腹だけが異常にふくらんで…そしてい
つも裸で裸足。でもいつも仲良く遊んでいる。




隣は夕飯のしたく

洗濯物は ”立ち入り禁止” のバラ線に干す。
隣のおばさんは夕食のご飯を焚いている。



                    隣のおばさんとその坊や↓ 
貧しい家族3
↑たぶん、撤去の下見に来た市のトラックだろうとのこと。 
           

上の写真では、お姉さんはわらのほうきで家の中を掃いて妹たち
に洋服を着せた後、ボロ布をかぶせたお人形さんの家(中央やや
左よりの白いかたまり)にお人形を入れて遊んでいる。双子の妹の
一人と。
(どこの国でも、子どもの遊びって同じなんだね… ハート

もう一人の妹は、お姉さんのまねをして大きなゴミを掃こうとして、
ひっくり返っちゃった。
そこで白い犬と遊び始める。(左手前)  


お母さんは足が悪いので、ほとんど一日中座ったまま。
動く時は腿から下を引きずって、腕で歩く。
今日は家族がどこからか拾ってきた廃材を分解したり切ったりしてたんねんに小さいサイズにしている。
そうして焚き木用にしたものを、家族がどこかに売りに行くんだ。

インドではビルの取り壊しがあれば、錆びたクギ一本まで、どんな廃材も貧しい人たちが来て全部拾って行くので、きれいさっぱり片付いて跡には何も残っていないそう。
(またそんなものまで買ってくれるところがあるっていうのがすごいね。)




貧しい家族4


アップ9
(上の写真アップ) 隣のおばさんが世間話に来たところ。


家の入口の布は、双子の一人がたたもうとして大きすぎてすっぽり
かぶってしまい、目をまわして放り出したシーツらしきもの。

姉と妹の一人はお人形さんに子守唄を歌いはじめ、
もう一人の妹は、二匹の犬と楽しそうにころげまわっている。

左下にあるのが、大きなごみとほうき。



*****  *****  *****


貧しい家族5


すっかり日がかげる頃、お姉さんが頭に壷を乗せて水を汲んで来ると、
帰ってきたお兄さんがポリバケツに水を入れて家の表に水を打つ。
こんな家だけど、大切な家族の家。
毎夕、家の中と表を掃いて水を打っている。
(すごい… 感心だよね。私より家事はうわてだよ)



(上の写真を明るくしたもの)
お兄ちゃん水まき

     ↑水を打つ兄          ↑髪をとかしてあげる姉
(水が飛ぶ様子も白く写っている)   
 


右手前は、隣の坊やが黒い赤ちゃん犬を見つけ、しっぽをふり
まわしたり、うしろ足を持って歩かせたりしているところ。

子犬は空腹な上おもちゃにされて疲れ果て、
”たまらんわ。かんべんしてよー」 って感じでこのあと右のゴミの中
に逃げ込んでじゃった。

お姉さんは妹の髪をとかしている。
お母さんはただ黙々と仕事を続ける。




貧しい家族6

アップ2
(上の写真アップ)


ボロ布をつぎ合わせ、ボロ布を詰めたボールで遊んだ双子は、飽き
て、家の入口に並んで座ってお母さんの後ろ姿を見ている。
(暗いのでわかりづらいけど、かすかに小さな人影が二つ浮かび
あがっている)

兄さんは、お母さんを手伝って長い板切れを割っている。
(木箱の左側のシルエット)

双子の姉妹はいつも裸で裸足だけれど、今日はお姉さんに洋服を
着せてもらったんだよね。
でも、やっぱりじゃまっけで、脱ぎ捨ててしまった。
(犬のうしろに放り出してある)




貧しい家族7

アップ3
(上の写真を明るくしてアップ)

お姉さんがボンヤリと川の向こう岸を見ている。 (木箱の右のシルエット)
何を考えているのかなー…

お兄さんは木箱の横でまだお母さんのお手伝いをしている。

双子の妹たちはお母さんに甘えようと近づくけど、お母さんが相手
にしてくれないので、かたわらでただ黙って立って見ている。
(お母さんの右側)

昼間はお母さんの両ひざをまくらに頭をなでてもらってお昼寝だけれど、
仕事をしている時のお母さんはきびしい。




川辺の風景
違う位置から見た川辺の風景


たそがれものがたり おわり 




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貧しい家庭の子どもたちを取り上げたので、上流階級の子どもの
通っている学校も紹介しておくね。


タビーの学校


シンの学校校舎


たぶん前述の家族の子どもたちは住民票もないだろうから、学校へ
は行っていないと思う。



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Comments

こんにちは

「日本は自由な国だと言うけれど、それはアメリカの管理下でのことだろう。報道はアメリカや日本政府に都合がいいように操作されていると思う。それらに騙されず、もっと広く客観的に...」と言われたアフガニスタンの方の言葉、ここアメリカに20年住んでいる私も夫(アメリカ人)も身にしみて感じていることです。メディアは売れる情報をさらに売れる形にして提供してくるので、惑わされますね。与えられる情報を鵜呑みにするのではなく、自分の足で情報を得なければと、先日、子供たちにもそのように話していたところです。

私は1988年にアメリカに留学したのですが、アメリカ人の大学生に、日本は中国のどこにあるの?とか、ゲイシャ(美の象徴だと思っていたらしい)に憧れる?など聞かれることがありました。映画製作をやっていたサークルのメンバーからは、日本人だからとカンフーの真似事をやって欲しいというリクエストも。(^^;)でも、その昔、私自身もハリウッド映画やテレビのニュースの情報のみでアメリカを知っていると自負していたようなところがあったのは確かです。

インド編の感想からずれてしまいました。すみません。

2年前、夫がHydrabadに出張になり、美弥さんと同じような感想を持って帰ってきました。夫はIT関連の仕事で行ったのですが、プログラマーの養成と人材をキープすることに苦労しました。がんばってトレーニングをしても、翌月には顔ぶれが変わってしまうのです。基本のプログラミングを学んだだけなのに、その技術を持って、新しい職探しを始める人が多数いるというのです。溢れかえるIT企業のせいだろうと言っていましたが、もっと深いところに理由があるような気がします。30年前(?)の美弥さんのストーリーに似ているなと思いました。それにしても、IT企業の建物は、とても新しくて外観はすばらしいのですが、中は故障だらけで、所々壁が剥げ落ち、雨漏りがしていたそうです。手抜工事のせいでしょうか。この外観とのギャップがインドの実状を物語っているようだったと。そして、道路を挟んで向こう側は、この↑の写真のような光景が広がり、胸がひきさかれる思いがしたと言っていました。しかしながら、社食は、インドのほうがアメリカの100倍くらい美味しかったし、勤勉な人たちが多かったとか。

すみません、ついだらだらと長く書いてしまいました。こんな書き込みですので、美弥さんだけが見れるコメントにしたほうがよければそうしてください。判断はお任せします。

この先も美弥さんのストーリーを楽しみにしています。

きこ

Re: こんにちは

きこさんへ コメントありがとう!「ふぅん…」「なるほど」「そうなのか…」「そーだよね」 うなずきながら読ませていただきました。

”長くて”と気遣って下さってますが、いただくコメントは、限られた情報基盤の私の書くものの内容に別の視点からの色合いを添え、豊かなページにしてくれるので、歓迎です。
私だけでなく読者にとっても興味ある内容だと思うので、載せさせていただきますよ。
もしきこさんにとって公表しない方がいい内容の時は、「管理者のみあて」にきこさんがして下さい。メールで下さってもいいですし。
でも、記事に関連した内容だったらぜひ考えや思いを読者と共有したいので、できるだけ載せさせて下さいね。

もしコメントがたくさんになったら(まさかですが)、カテゴリーに「コメント専用ページ」を作ろうと思います。そうすれば過去記事への新着コメントをその記事を読み済みの読者にも読んでもらえますので。(一度読んだ記事はまた戻って読むことはほとんどないですものね)

ということで(皆さまも)、一言でも長いのでもこれからもよろしくお願いしまーす。

感動した

よく撮りよく書けています。
やらせっぽいそこらのレポート番組よりよっぽどぐっと来た。

Re: 感動した

とてもプロのカメラマンのようには行かなくて画像が暗くてわかりづらくて公表するにはムリがあったけど、ドキュメンタリーなので見たままありのままを伝えたかっただけだよ。

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