2-14 ローリングストーンズとニアミス 


そして眠れぬ夜の明けた朝。
あの、しばらく姿をくらましている ローリングストーンズが、今日、ハイドパークに来るんだって!

バッキンガム宮殿も、それを取り囲む広々とした公園地帯も、黒熊の帽子に赤いユニフォームの衛兵さんたちの交代式、スコットランド民族衣装のバグパイプの演奏も良かったけれど、

思いは、空模様を気にしながら午後のハイドパークに走るばかり。
本物のローリングストーンズに遭遇しちゃったら、すっごいことだよ!


ハイドパークに出て大理石門で雨宿りしていると、わんさわんさ来る来る、霧の中をそこら中からヒッピー風の若者たちが集まって来た。

上半身はだかに長髪にひげもじゃ。
女性はヨレヨレのロングスカートに頭にはスカーフを巻いて、裸足だったりして、子連れもいれば、キャラバンでやってくるグループもいる。

そのうち警官隊までぞろぞろ入って来たけど、危害を加える様子もなく、紺色のステキな制服姿で胸を張って状況を見守るだけ。

本当にローリングストーンズは来るんだろうか?

期待に胸、はち切れそうにして(外側にはなんら影響なし)集団の流れに沿って行くと、

いつの間にかここまで膨らみ上がったかと思うほどの、何百何千という若者たちが、やぐらの高く組まれた野外ステージを取り囲み、その上で、ヒッピー男が一人、大演説をぶっている。

聴衆もこぶしを振り上げて同調しているではないか。


「ねえ、ねえ、何て言ってるの?」

A子さんの理解するところによると、彼はローリングストーンズのコンサートをポリス(警察)が阻止していることに抗議をしているそうで、

「なぜ、ロングヘアが悪い! 二千年前、キリストだってロングヘアだったじゃないか」

って叫んでいるんだって。
ああ~ん、そんなー!! 。゚(゚´Д`゚)゚。


しばらく群集に混じってヤキモキしていると、その大観衆の視野に突然飛び込んで来たものは…

ステージを這い登り、演説する男の至近距離まで近づくと、かえるのような格好で、男の横顔にフラッシュを浴びせ始めた日本人カメラマンのおじさんだった。

もちろん、ねずみ色のスーツに革靴で。

大きなどよめきと共に場はいっぺんにしらけたように見えたけど、男は気を取り直して演説を続け、

私たちはといえば、あたかも、自分たちはあのおじさんと同じ日本人ではないのだというふりを装うことにのみ専念した。


この日、ローリングストーンズはハイドパークで野外コンサートをやりにやって来たのに、コンサートは阻止されて(誰に?)結局おじゃんになり、大勢の若者たちが町へ繰り出してデモ行進。
交通がマヒして大騒ぎになったと、テレビのニュースが伝えていたそうだ。


超ガックリ来たけど、私たちにはそこまでつきあっている暇はなかったんだ。
というのは、すぐ近くにいたフランス人の青年が、

「僕はこのコンサートと、14日にウエンブリーパークである、

クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングと、ロバート・ミッチェル、バーズ の野外コンサートのために、働いてお金を貯めて、はるばる南フランスからオートバイでやって来たんだ。」

と、話してくれたから。

C・S・N&Yの、あの “小さな恋のメロディー” や、“いちご白書” の素晴らしい歌の数々。
ニール・ヤングのソロが生で聴けるかも!

野外コンサートなら、まだチケット間に合うかもしれない。


そう、そして次に私たちの移した行動は、まっすぐにピカデリーサーカスのそばのプレイガイドに1秒でも早く辿り着くこと。

そして、最後の最後のそのチケット3枚、思いがけなく買えたんだ。

ブラボー!!





       ミニ ロンドン案内



バッキンガム宮殿、ダウニング通り10番地、
トラガルファー広場、ビッグベン、
ハイドパーク




広~いハイドパークの ほんの一部

ハイドパーク2


   

バッキンガム宮殿

ロンドン絵葉書300

ダウニングストリート10番地    ↑ トラファルガー広場



バッキンガム宮殿2
 
  バッキンガム宮殿
  衛兵の交代式。

  ここには女王様がい
  らっしゃる。





首相官邸  ダウニングストリート
  10番地と呼ばれる建物。
  実は 首相官邸。
  
  何のへんてつもない建物
  だけど、中はシャンデリアと
  かあって豪華なんだって!
 
        
          ↑ わかりにくいけど、
          ドアの前に警備の人が立っている




トラファルガースクエア   トラファルガー広場の一部。
   
   大英博物館やセントポールズ
   寺院がすぐ。
   上のライオン像は、三越デパー
    ト入口のライオン像のモデル。




                  ↓ バッキンガム宮殿 遠景

ロンドン絵葉書bigben300
 ↑ ビッグベン&ウエストミンスター宮殿(国会議事堂)



ビッグベンたて     国会議事堂
世界標準時はここ 
   

国会議事堂2
国会議事堂壁面アップ

ビッグベン夜


↑ クリックすると大きくなって、けっこうすてき。






お話が進むのが日記風でゆっくりなので、「スポット訪問記」も
  平行してがんばって書いています。

  今回は、「Vol. 4 バンクーバーの大学」
  いっしょに見てね!





スポット訪問記 Vol. 4 バンクーバーの大学 


ブリティッシュコロンビア大学




カナダ地図
        
       クリックすると、少し大きくなるよ


カナダでは同じ国内で、東海岸と西海岸の時差が4時間半。
だから、こっちでお昼を食べ終わってゆっくりしてる頃、反対側
ではそろそろ夕飯の準備を始める。
電話しても、話が合わないだろうね?


今日は、地図の左端にあるブリティッシュ コロンビア州の
バンクーバーにある、ブリティッシュ コロンビア大学
UBC= ユニバーシティー オブ ブリティッシュ コロンビア)
に、夏休みに短期留学した時のお話。



UBC絵葉書

           大学の絵葉書


大きな半島の先が、ぜんぶまるごとキャンパス。
(約1000エカー、402 ha、126万坪)


UBCはカナダ屈指の大学のひとつで、広々とした敷地の中に
校舎を始め、いくつもの学生寮と研究所、病院、人類博物館、
考古学博物館、コンサートホール、劇場、スタジアム、図書館、
新渡戸記念館などがある。

市街地からは、車で20分くらい。

当然海に囲まれているので、泳げるビーチがたくさん。
私のいた寮は、上の絵葉書写真の右手前あたりにあり、
崖を下りると ヌーディストビーチ (レックビーチ) だった。

でも、そこに踏み込む上のルールが、

”ドント タッチ! ドント テイク フォト!” (触るな!写真を撮るな!)

だったので、写真は撮れなかったよ。
水着は、着てても着てなくもいいの。


<注>  一般に開放はされているけど、そこへの崖道
     はかなり急勾配なので、体力に自信のない
     人にはキツイと思うよ。






UBCからの絵葉書1
     (クリックで拡大)

書き損じの絵葉書。
それでも面白い情報が書いてあるので、読んでみて。







寮      大学の食堂外

 私のいた女子寮。夏休みは学生がいなくなるので、
   夏期講習受講者に貸してくれる。 

       右は学食のテラスで朝ごはん。外も気持ちいいよ。↑


キャンパス内は車両侵入禁止だったので、授業の教室の移動はもち
ろん、学食(いくつか点在)へ行くにも、プールへ行くにも、ビーチへ行
くにも、はたまた石鹸ひとつ買いに門の外へ行くにも、歩いて行かなく
てはならなかったから、すごくいい運動になった。




キャンパス芝生で  女子寮前の芝生の上で、日向ぼっこ。
  ウン。 裏の崖下のビーチにも行ってみた。
  ← このまま。水着で。(ダヨー!)









バンクーバーの街角で2    バンクーバーの街角で

     バンクーバーの街角で
     


ビーチ  ヌーディストビーチの写真は撮れないので、
  バンクーバーのキツラノビーチ の写真ね。
  あまり変わらないよ。
  服を着てるか着てないかないだけ。
 




バンクーバーのビーチ2    たぶん、イングリッシュビーチ










スタンレーパーク


 ヴァンクーバー絵葉書空から   


      スタンレーパークアップ
                   アップ  手前は市街地
 
  ↑ 半島の先というより、市街地のある半島の先についた島とい
   う感じで、緑色の部分がまるごとぜんぶ、スタンレーパーク と
   いう公園。 
   
   またその敷地が広大なんだ。UBCと同じくらい(402 ha) だって!
   湖あり、川あり、原生林あり、運動グランドやテニスコートあり、
   サイクリング道あり、ビーチありと、何年通っても飽きなさそう。



バンクーバーの湾夜   この写真は、上左の絵葉書の右手前
   の隠れた部分にある丘(高級住宅地)
   の上から、この湾の夜景を撮ったもの。
   
   左向こうの黒い影が スタンレーパーク
   だね。





続きを読む>> に追記



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2-15 オックスフォードの日は暮れる 

日本で申し込んでおいた学校のコースが9月2日から始まるので、ろくろくロンドン見物もせず、A子さんとB君に送られて目的地のオックスフォード行きの電車に乗った私は、またひとりぼっち。

夏期講習の地にオックスフォードを選んだのは、ロンドンのような大都会よりも静かな大学の町の方が良かったから。

ハーバードやケンブリッジと並んで、世界一とか言われている大学のある町。
大学に入れなくても、その学生生活の雰囲気に触れるだけでも光栄じゃない?
ヨーロッパ諸国への旅に出る前の短い期間でも、勉強するにはいい環境でしょ。


その私も、いざオックスフォードに着いた時にはめんくらった。
駅の前で、学校への案内図を片手に行ったり来たり。
そんな番号のバス、どこにも見つからないんだ。

通りかかった人に聞いても、

「ノーノー、ノット ヒア、ペラペラペラ」
「サンキュー。??」

半分泣きっ面で立っていると、駅前に停車している運転手付きの立派な車に乗っていた品のいい紳士が降りて来て私の紙をのぞき込み、優しく微笑んで、どうやら車に乗れと言っているみたい。

ちょっと不安そうにしている私を見て、ちょうど駅を出て来た尼さんにも声をかけ、

「いっしょに乗りなさい。」

親しそうに話している3人と私を乗せた車は落ち着いた住宅地を抜け、レンガ造りの建物の前に止まった。

看板も出ていないけれど、これが、私の目指していた学校のよう。

紳士は私の入学証明書を持って事務所らしい部屋へ入って行ったけど、すぐに手招きして私を呼び、頭を撫でながらにこにこ笑って何か言って出て行こうとするので、私は急いでポーチの中から鈴の付いたポックリのお守りを取り出してお礼にと差し出したんだけれど…
受け取ってもらえなかった。

運転手さんも尼さんも、窓から手を振って「グッドバイ」。
本当にありがとう!


さあ、それからがまた大変。
秘書さんからもらった下宿の住所と地図をもらってやっとのことでその家を訪ね当てたまではよかったんだけど…
いくらベルを押しても誰も出てこないんよ。

おまけにドアの前には溜まりに溜まった郵便物と中身の入った牛乳びんが埃をかぶっている。

ホームステイは食事も付いてメチャ高かったから、私は朝食のみ付きで夜は自炊ができる下宿を選んだ。
だから、『大家さんは待っていてくれる』 と信じてた。

大家さんは、今日、私が着くことを忘れて、夏のバカンスでどこかへ行ってしまっているの?

(後でわかったことだけど、イギリスでは長期休暇のことを “ホリデー” っていうんだよ。
“バカンス”っていうのは、アメリカ英語なんだって)

もう何か月も前に学校と下宿の手続きを済ませて来たのに…。
ひどいよね、外国から言葉もわからない国へ来た生徒にこんな思いをさせるなんて…。 グスン。

荷物を持ってまた学校に引き返しても、もう5時過ぎ。
きっと事務所は閉まってしまったと思う。

玄関のポーチの階段に座って途方に暮れていると、とうとう日もとっぷり暮れてしまった。

そのあたりは、白枠の大きな出窓のある、ほどよく風化された石造りの家々の並ぶ静かな住宅街で、それぞれの家にはゆったりとした前庭があり、部屋も3~4階に、屋根裏部屋までありそう。
お隣さんとは1メートルほどの高さのレンガ塀で仕切られている。
車はおろか、猫一匹通らない。

不安と心細さに涙が零れそうに…。

『私は今日、どこに泊まればいいんだろう…。』

まさに溜まった涙が目から落ちるー、というその時だったよ。
一台のボロワーゲンがその家の前にきしんで止まり、イギリス人らしい若い男性が降りたって来たのは。





 ミニ観光案内 オックスフォード大学



 ↓ オックスフォード大学の絵葉書(一部)

OX大学空から絵葉書

 (クリックすると拡大できて、もう少しよく細部が見えるよ)



オックスフォード市は、”街の中に大学がある” ケンブリッジ市に対し、
大学の中に街がある” と表現される。

オックスフォード大学は、ひとつの大学じゃなくて、40いくつの
カレッジの総称
なんだ。
それぞれのカレッジに歴史と伝統があり、校舎とキャンパスとチャペル
と、学寮とかがある。
たとえば、その中のひとつ ”ニューカレッジ” でも、600年以上の歴
史があるんだよ。(1379年創立)

これから1年半住むことになるので、またおいおい紹介して行くね!



ボードレアン図書館外から

ひとつ上の絵葉書の左下にあるドーム型の建物、
ラドクリフ・カメラ(ボドレアン図書館の一部)
世界的に古くて由緒ある図書館で、聖書の原書もあると聞く。




ボードレアン図書館とカレッジ

上の絵葉書の左下から、図書館をかすめてやや右上方向を見てい
る感じ。 むこうに見えるのは何てカレッジだっけ…
わかる方は、ご一報下さい。


(”オールソウルズ カレッジ” だそうです。ありがとう。)



ボードレアン図書館内部

この写真は数十年後に訪れた時に撮ったもので、
”女の子” と呼べる年ではないため、ぼかしました (;・∀・)
でも、図書館の内部を見せしたいので載せたヨ。


この図書館の内部は、一般公開されていないけれど、
ハリーポッター・賢者の石」 編の撮影に使われた。
映画のラスト、病院のシーンはこの建物の中だし、魔法学校に出てく
る図書室も、ここの図書室だって!



ボドレアン図書館内部

ボドレアン図書館内部 (絵葉書)



  ら 


お話が進むペースが日記風でゆっくりなので、「スポット訪問記」も
  平行してがんばって書いています。

  今回は、「Vol. 5 ウイスラー&ブラッコム山 他
  バンクーバー市街地から見える雄大な山々をヘリコプターから
  見下ろすよ。
  そっちもいっしょに見てね!





スポット訪問記 Vol. 5 カナダ/ バンクーバー周辺 



ウイスラー&ブラッコム山


 
バンクーバー市内から、車で1時間半くらいだったと思う。
真夏でも雪に覆われているあの荘厳な山々に、出かけてみよう!


(写真はスペースの都合上ほとんど縮小サイズになっているけど、クリックすれば大きくなるので、雄大な景色はぜひ、ひとクリックして大きなサイズで見て下さい!) 



ウイスラーの展望台より
  この景色はまだ地上からのもので、
  ロープウエイでウイスラー山に登っ
  て撮ったもの






ウイスラーヘリ乗るとこ      ヘリより地上

ヘリコプターに乗るよ わーい!    目がクラクラするー!



ウイスラー空撮1

山の上にも湖があるね!



ウイスラー空撮空2

すっご~い絶景でしょう?!



ウイスラー絵葉書

これは絵葉書



ウイスラーとブラッコム山は、夏でもスキーできるんだって。(今も8月)
標高差1400mを一気に滑り降りられるんだけど、スキーを履いて頂上まで行き、降りられずにヘリコプターの助けを呼ぶ人もいるそう




ウイスラー空撮5

雪解け水が岩肌を流れているのも、ヘリの窓から肉眼で見える




キャピラノつり橋



 いつか、CMで使われていたね。


カナダさけの川    さけが登る川
 
鮭が登る川。 こんな渓谷に、キャピラノつり橋が架かっている



キャピラノつり橋1   キャピラノつり橋

渡るの、迫力満点だよ!


キャピラノ横


キャピラノつり橋: 高さ70m、長さ 137m。


説明

100年以上前、キャピラノ渓谷の景観の美しさに魅せられた人が、自分と妻のためにキャビンを建て、初めての橋を友人たちと馬の力を借りて作った。
麻のロープを張った上に、杉板を乗せたもの。

その後、訪れる人が増えたので、1903年に麻よりも安全なワイヤーブリッジが架けられた。
1914年には、両端がコンクリートに埋められ、さらに安全になったんだって。





サーモンハッチェリー(サケの孵化場)



カナダといえば、サーモン(鮭)の保護に国をあげて力を入れていることで有名。
"きれいな川だから帰って来る" という鮭伝説と事実に、私はいつもとても惹かれる。
だから、"カナダの鮭の環境に足を踏み入れ、その壮大な一生の一部にでも触れてみたい" と、その川と、上流の孵化場を訪れてみたよ。
いっしょに体験しましょ。



サーモンハッチェリーへの道

孵化場への道




  ← こんな山道をひとりで何キロも歩いた。
                



ハッチェリーには、鮭の種類や、漁の方法や一生について
説明した展示室もある。


孵化場展示2    孵化場展示


さけの通り道ガラス       さけの通り道ガラス2
   
 


ダムの横にちゃんと鮭の通り道が作ってあり、鮭が通る
のがガラスを通して見れる





関を登るサケ 
  感動的瞬間を写真に撮ったよ!


   一匹の鮭がジャンプして、ダムを越えた
  ところ。
 (クリックして拡大して見て!)





孵化場外  そのダムの柵の前。
  すっかり日が暮れてしまった。






職員
  このお兄さん (ハッチェリーの職員)
  が施設を見せながら親切に説明して
  くれた上、帰りはダウンタウンまで車
  で送ってくれたんだよ。
  迎えに来た彼女といっしょに。









* カナダの鮭についての説明と 鮭伝説 について、
   続きを読む>> に入っています。

   興味のある方は、もう少しどうぞ。








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2-16 大家さんいない! 


日が暮れて電燈も点いていない下宿の玄関先に、車で横付けして降り立って来たイギリス人青年。
大家さんの息子さん、それとも下宿人のひとり?

「あなたはここに住んでいる人ですか?」

すがるように聞くと、彼はきつねにつままれたような顔をして、

「No. My girlfriend lives there. 」
(いや。僕のガールフレンドがあそこに住んでるんだよ)

と、3階を指差して見せる。

私が、知っている限りの単語を並べて説明しても、
「I don’t know」 (知らない、わからない)
気の毒そうに返事するばかり。

幸いなことに待ち合わせていたのか、彼のガールフレンドがそれからすぐに帰って来て私と彼をいっしょに自分の部屋に通し、ミルクテイーを入れてくれた。

彼女が言うには、
大家さんのミセス ロビンソンはご主人を2週間前に亡くして以来ずっと留守で、他にも下宿人はいるけれど私のことは何も聞いていないと言う。

彼女にもどうすることもできなくて、日本のことを聞いたり、オックスフォードの話などを聞かせてくれているうちに、

「そうだ! 半地下に空き部屋があるみたい。
独立していて入口も鍵も別だから入れないけど、ひとつ窓がこわれて板が打ち付けてあったわ。
そこから入れるかも。

私の彼にそれを剥がしてもらいましょ。」 (モチ、英語で)


そして約30分後、窓から不法侵入した私は、わりと広い、家具付きの部屋のベッドの上に座っていた。
何だか悪いことをしているみたいでとても落ち着けなくて、荷物を解く気にもなれないよ。


すると窓の外に、黒いレインコートに大きなスーツケースを引きずった日本人の男の子(実は同い年)が現われ、むこうもびっくりして私を見下ろしている。

その名は御手洗博人君。

聞けば、彼も今日、学校でここの住所をもらって来たんだって。
それまでの2日間は、
「ヘイ、タクシー! ホテール!」
の結果、最高級ホテルに連れて行かれ、そこで時間を潰していたとのこと。

その半地下には他に人の住んでいるらしい部屋がふたつと、台所、バスルーム、トイレがあり、独立した家のようになっていたけど、空いているのはそこひと部屋だけ。
二人とも一人部屋で申し込んだんだけど…。


「大家さん、帰って来そうにないな。いいじゃないか、今日はここで二人で泊まれば。」

「えーっ! まさかぁ! 
あの、オックスフォードのユースホステルってどこにあるか知ってます?」

「さあね、僕はホテルにしか泊まらないからね。」

「…」

「仕方ない。僕、今晩もホテルに泊まるわ。」

「いいの? ごめんなさいね。
ところで三日もいるならどこか安くておいしいレストラン知ってます?」

「知らないなあ。 高いレストランでステーキばっかり食べてたから。
僕も夕食前だから、一緒に出てみようか。」

また窓から出て蓋をして、私たちはすっかり闇のとばりに包まれた通りをメインストリートに向かって歩き出した。
人通りはほとんどなく、空気は冷え込んでいた。


「これからどのくらいいるんですか?」

「一年」

「一か月どのくらいかかるかしら?」

「10万円は要るだろう。」

「えーっ、そんなにー? 
イギリスは物価が安いから月3万5千円で足りるって聞いたけど…。」

「冗談だろ。どうするの君、そんなことで。」

「お仕事は?」

「ん? 社長だよ、将来は。
おやじが社長だもんでね。」





ミニ オックスフォード案内




学生下宿のある通り   学生下宿がたくさんある通り
   のひとつ








一般的な家   一般庶民の家
   
   二世帯続きで、隣は別の家











庭   その裏の庭と若い家族

   一般庶民の家はもちろん、
   学生下宿もみんな
   けっこう広い庭付きだった








オックスフォード駅近く   オックスフォード駅を背に
   町の中心地に通じる道を
   撮ったところ








マグダレンカレッジ   車で来た場合にオックスフォード
   の入口あたりにある、
   
   モードリン(マグダレン) カレッジ
   絵葉書

   夏目漱石が、このタワーの水彩画を
   残している。
   (東北大学付属図書館蔵)





カーファックス   賑やかな町の中心にある、
   「カーファックス」と呼ばれ
   る交差点絵葉書  
  
   時計塔があるので、
   よく待ち合わせに使われる






 ほとんどの写真はクリックすると大きくなるよ



2-17 マリアとの出会い 


住宅街のメインストリートをいくら歩いても、レストランはおろか喫茶店もお店も見当たらない。
真っ暗な道路には枯葉が舞い、家々の窓にはカーテンが引かれて、その隙間からかすかな光がもれているくらい。

やっと見つけた6畳ほどのわびしい小さなファーストフードショップ、ウインピーでハンバーガーをかじったあと、その社長の息子、御手洗博人君のホテルの予約にお連れで行くと、

それは由緒と伝統という言葉にピッタリの、オックスフォード ランドルフホテル。
表にはドラゴンの旗ひるがえり、年期の入った木の回転ドア、ピカピカに磨き上げられた手すりや調度品、ふかふかの真っ赤なじゅうたん。

相向いには、スポットライトに照らし出されるギリシャ風の白い大きな建物、何でしょう?
(あとで、アシュモリアン博物館とわかる)

Z ターンして送ってくれた御手洗君と下宿やさんに戻ってみると(いちおう、いいとこあるじゃん)、あら、半地下に電気が点いている。

今度は正式に玄関に回り(!)、ピンポンとドアベルを鳴らしてみる。

ドキドキして待つと、ドアを開けてくれたのは、日本ではほとんど見かけない体型と、愛くるしい人なつっこさを合わせ持った外人女性。
これが後に地球を半まわりしても会いに来るほどの仲良しになるアルゼンチン女性、マリアとの出会いだった。

「 カム イン 」

彼女は私たちと同じ学校のコースに出席するために、2~3日前から私たちの侵入した部屋の向かいの部屋に住んでいるんだけど、大家さんにはまだ会ったことがないって。

何て親しみのある優しい表情、声、話し方。
年はずっと上みたいだけど無邪気さが自然で、何年も前からの知り合いのように、こちらはぐんぐん惹きつけられてしまう。

マリアは、私たちの身の上に深く同情してくれた。
御手洗君はとうとう、ひとこともしゃべらなかったけど。

その夜。
私は、くやしさでとても眠れなかった。

踏むべき手続きはすべてきちんと踏み、払い込みも全額済ませ、遠い日本から右も左もわからない国へやって来る私たち外国人学生に、この受け入れ体制って何だろう?

もし3階のお姉さん、ジェーンや、マリアが遅く帰っていたら、私たちは暗くて寒い路頭で、荷物を持ったまま右往左往していた。

翌朝学校で文句を言おうにも、日本式発音で文句を並べるだけでは話が通じるはずはないので、お手上げだ。

それで思いついたことが、初めての自主的課題英作文への挑戦。
題して、「オックスフォードの初日」。
言いたいことをできるだけ正しく校長先生に伝えるため、辞書を引き引き大奮闘した。


翌朝のこと、いっしょに登校したマリアが事務所であれこれ秘書と話し合ってくれたが、いっこうにらちが開かない様子。

聞いている私には2~3の単語が時々判明できるくらいで、あとはさっぱり。
何か聞かれても、相手の使う単語の端はしから全体を想像して、「イエス」 とか 「ノー」 とか答えるだけ。
それがかえって混乱をきたすので、どうどうめぐり。

レベル別クラス分けテストの時間になったけど、そういう訳で私は誰がどう見ても初心者。
あまりに一目瞭然だったので、テストは受けずにABCから始める初心者クラスに入れてもらったけど、

秘書さん、うなずいて異議なし。






   ミニ オックスフォード案内




バンブリーロード2  オックスフォードの住宅街の真ん中を
  走るバンブリーロード。  
  学校はこの道をずっと行ったところの
  右側、
  下宿はまたその先を左に入ったところ。

  
   ね! お店も何もないでしょう?!




バンブリーロード   バンブリーロードとその脇道と
   自転車に乗るオックスフォード大学
   女子大生。
  
   たくさんの学生が自転車を利用。
   私たちも期間レンタルで借りた。






アシュモリアン博物館

アシュモリアン博物館
イギリスで一番古い公立博物館だって




オックスフォードの語学学校

私が最初に行った学校 (当時の白黒パンフより))
看板はない




OXハードフォード&ニューカレッジ

ハートフォード カレッジ と ニューカレッジ



溜息橋

上の絵葉書の通路 (ためいき橋) の前にいるよ