2-23 スーパーマン日本男児 


口は悪いけどめんどうみのいい親分肌のおっちょさんは、名物日本人。
某一流大学哲学部卒。空手何段。
ずんぐりむっくりでたいしてイケメンでもないくせに、どういうわけか外人女性に大モテ。

授業で日本の紹介として空手を紹介した時、

「カラテ イズ ノット ファイティング。
イト イズ ヒロソヒー、 ストップ ザ ウォー。」

(空手は闘争ではない。哲学だ。それは戦争をストップするものだ)

と言って、シンディーに感動を与えたのがそもそもの始まり。

その後シンディーの家でやったパーティーには、腕をふるって天ぷら、すきやき、湯豆腐をプロ並に仕上げ、その上、空手を見せてくれとせがまれ、

「これは本来は見せ物ではないんですよ」

などとうそぶきながらも、精神を集中して厚い板を見事に割ってしまったので拍手喝采。
その上、日本の歌が聴きたいという要望に応えてギターを弾けばこれがまた、日本の曲からロックまで、ボロロン、ボロロン一級品。

とうとう、「ヨシオは料理もうまいし、空手も強いし、ギターも弾けるし、何でもできて、まるでスーパーマンみたい」
と、ますます (外人女性に) もてたんだけど、

「名声が落ちてはいけない」 と、歌だけは決して歌わなかった。

ところが彼が日本へ帰る前、相棒の “ちゃんちゃんこさん” こと定夫さんとスコットランドの旅に出る前にやったお別れ会には、
いっしょのホームステイ先のイタリア人の女の子たちが日本人に教わった “岬めぐり” と “からすなぜ鳴くの” を歌ったあと、

「どーしてもヨシオの歌が聴きたい」 と言って聞かず、おっちょさんは仕方なく、“妻を恋ゆる歌” を唸(うな)ったんだけど…
イタリア人の女の子たちは、それはそれはけげんそうな顔をしていた。


定夫さんとのスコットランド旅行では、途中でジュースが飲みたくなり、バスの停車中にスーパーでオレンジジュースを買ったら、それが濃縮ジュース。
次のストップで牛乳のパックらしいのを買ったら、それが生クリーム。

二人とも飲むに飲めずに、喉をカラカラにしてへたばっていると、後の座席で一部始終を見ていた老夫婦が家に呼んでくれ、ご馳走して一晩泊めてくれたとか、

どこかの町で、鳩にパンをやっていたら、浮浪者が寄って来て、「鳩になんかやるなら俺にくれ」と、パンを全部取られちゃったとか、

あまりスーパーマンらしくない旅をして来たみたい。


このおっちょさんが、帰国前に言った。

「外人の女の子は、きれいなのもおるけど、あいつら、男といっしょに楽しもうって方が先なんやな。
やっぱり日本女性が一番ええな。
ええか、しっかりせえや。おまえとひろとは、どうも頼りなくて見ておれん。
俺は帰るけど、困ったことがあったらちゃんちゃんこに何でも相談せえや。
あいつは日本でも一流会社に就職スッと決まって、あの若さで責任ある仕事なんでも任されてる、しっかりした頼りがいのあるやっちゃ。
俺からもよー頼んどくさかいな。」

「はーい。」









  旅先で出会った、つかの間の仲間たち



ちゃんちゃんこさんです


おっちょさんの帰国を前に、おっちょさんとちゃんちゃんこ
さんがスコットランド旅行に発つところ。
パイプ先生も途中までいっしょのもよう。





 「ほなな、行ってくるわ」  「いってらっしゃ~い」






なんだかんだ言っても、いい同国人仲間だったさ。
え? 恋がなくて残念だったって? ウーン … … … 

(たぶん私が子どもっぽかったので、誰も女と見なかった)










 この頃出した、祖母宛て絵葉書の裏面

 (どんなことを考えていたのかわかる)




 

 スポット観光編 Vol. 6 イギリス/ ブレナム宮殿 新記事載せました。
 そこの広~い庭は、私のだ~~い好きな場所なので、そっちも見てね。




   

2-24 目標設定! 


そんなある日、亮介兄さんから手紙が来た。

生活水準の高いストックホルムのお皿洗いは全自動。
一日中ボタンを押していれば、ほとんど機械がやってくれるんだって。

「今さらまたイギリスで苦労して勉強することはないよ。
知識ばかり詰め込んだって何になる。

それより一緒に北欧で働いて、愉快な仲間たちとワーゲンバスで旅に出ようよ。
これから毎日、ストックホルムのコンサートホールの前で夕方の5時から7時ま
で待っているから、できるだけ早くおいで。

会わせたい人もたくさんいるんだ。」

さあ、どうしよう。
迷ってしまう。

このまま英語の勉強を続けたいし、かといって正しくきれいな英語が短期間にそこそこ身についたとしても、果たしてそれで満足できるんだろうか。

その答は出ないし兄さんの誘いは嬉しかったけど、私は自分の心の声に従って、このまま勉強を続けることにする。

それで、日本で買って来た、「ヨーロッパの鉄道1か月間乗り放題」というユーレイルパスをキャンセルし、戻ったお金を学費の足しにすることにした。
これから何か私にもできる仕事を探すよ。

オックスフォードにいる日本人で、レストランでもぐりで働いている人たち何人かに会った。
「もぐり」とは、労働許可証なしってこと。
学生ビザや観光ビザで入国した人は労働してはいけないんだけど、お皿洗いをしている学生はどこにでもいるもんだ。


さて、イギリスに来る語学学校の生徒はみんな、毎年6月と11月に行われるケンブリッジ大学の英語検定合格を目指すんだ。
日本の英検のようなものだけど、日本と同じく政府(日本は文部科学省)認定で、ケンブリッジ大学が委託されて実施している。

”ローアー ケンブリッジ” と ”ケンブリッジ プロフィシェンシー” に分れていて、
前者はその後、”ファースト サーティフィケイト” という名前に変わった。

”日本語は全く関わらない、生きた英語力の総合評価” という点で、内容・質ともに日本の英検とは比べられないけど、

(つまり、質問もすべて英語だし、日本の英検のように難易度を高くするために実際に使われていない単語や文語調の表現などが出ることはない。また、自分の意見を系統立てて述べる力も重視される)

ローアーケンブリッジの方は強いていえば英検の一級と二級の間のレベルだ
そう。

その上のプロフィシェンシーの方は、訳すと、”(…の)熟達、熟練、技量”
まさに英語のプロってこと?

イギリスには階級制度がまだあるので、身分の低い人たちの中には正しい英語を話せない人もいて、(マイフェアレディーの映画を観れば納得できる)

このプロフィシェンシー試験は、「英語を教えたいイギリス人も受ける」 とか、「イギリス人でも落ちる人がいる」 と言われている。
だからもちろん、ほとんどの日本人は落ちて、日本人合格者は日本全体でまだ 2,000人 くらいだって。
バイリンガルも国際ビジネスマンも学者も入ってだとしたら、私なんて何年勉強したって受かりっこない!

でもせめてローアーケンブリッジの資格を取れば、世界を旅するにしても、お皿洗いよりいい仕事をさせてもらえるんじゃないかなー。

そうなれば旅もずっと楽しいものになるね!


あのね、イギリスには ”オペア ガール” というシステムがあるんだよ。

外国人学生がイギリス人家庭に住み込みで家事手伝いをしながら部屋と食事といくらかのお小遣いをもらえるというもので、気に入られれば家庭によっては学費の援助までしてくれるというもの。

(「なんで女だけなんだぁ~!差別だぁ!」って声が聞こえて来そうだけど… まあ、レディー ファーストの国だからね  ??)

ちょっとだけ日本の書生みたいな感じ?
師の家に住み込むのじゃないところが違うけど。

これは外国人学生への経済的援助と、イギリスを実際のイギリス人家庭の中に入って知ってもらおうという、政府の国際親善策のひとつでもあるんだ。

一家族と正式に契約すれば、ビザも一年、ポンともらえるそう。
オペア ガールの仕事は、オペア エージェンシーへ行けばいくらでも紹介してくれるし、時々学校の掲示板でも募集の貼り紙を見かける。

いざとなったらその仕事を見つければいいじゃない?

決めた!
英語の勉強をもう少し続ける。


ということで、来年6月のローアー ケンブリッジ合格を目標に、とりあえず一日おきのお皿洗いの仕事を確保し、亮介兄さんにその旨を知らせたよ。

最初は 「早く帰ってアンシンさせてくれ」 と言って来ていた父からも、

「それほど勉強したいのだったら結婚など構わずに、一つでも上の資格を取って来い。少しくらいの援助はしよう。がんばれ」

という手紙と一緒に、冬物衣類と食料が届いた。


今の私、お金も僅かだし言葉もろくに通じず、まるで異国に放り出された赤ちゃんみたいだけど、
目の前に本当にやりたいこと、そして手の届きそうな目標ができた。
それは、

”もう少し英語が話せ、相手の言うことも理解できるようになりたい”

いつまでたっても簡単な天候と 「ハウ アー ユー?」 の会話しかできないんじゃ、つまらないもの。

自分の考えや思いを伝えたいし、相手のこともわかりたい。
そのためには相手の国のことも直接聞いて、もっと知らなくちゃ。
英語でだよ。
英語が話せるようになることで、世界がぱぁ~っと広くなるような気が
する。

だから、まず、ローアー ケンブリッジ合格ね!
そのためには、もぐりのお皿洗いだって何だって(夜の蝶は没)する。

がんばろっ!






      ミニ オックスフォード案内




映画館の近く

町の中  映画館の近く



コーンマーケット通り靴屋さん

コーンマーケット通り
銀行、デパート、商店、マクドナルドなどが軒を連ねる




路上クリーニング車

夕方、5時頃になると、こんな路上クリーニング車が現れる



オックスフォードの小道2

オックスフォードの小道
(これは、フォトライブラリー のフリー素材をいただきました)




大学の裏道

大学の裏道


キングスC425

たぶん、キングズ カレッジ




観光案内の写真には、後で撮ったものも混じっています。